よろしく




「明けましておめでとぅ! キョン!」
「あぁ今年もよろしく、じゃぁおやすみ」
「えっ、まだ早いわよ!」

現在時刻AM0;01…
そろそれ眠いんだよ、今まで十分騒いだだろう?「もう朝だから起きなさい!」
無茶な…
外は漆黒の闇だぞ? まぁ灯が結構点いてるけど。
「だったら尚更よ、ほら、初詣行くわよ!」
早くない…?



俺とハルヒが付き合い始めてから3ヶ月が経った。
今でも超アツアツなわけで俺はカウントダウンということでハルヒの家にお邪魔している
わけだ。言っておくが断じてイヤラシイ事をしに来たわけじゃないからな?
俺が床にゴロンと寝転ぶとハルヒは俺の上に乗ってくる。
俺が無視してるのにこいつは構わずに俺の腕を引っ張る…
「行こうよ!」
「まだこんな時間だし、いいじゃないか…」
「だめーよ! 他の人たちに運が取られるわ!」
誰が運目当てで初詣にいくのか…
それは『おみくじ』目当てのやつらじゃないのか?
「いいから行こうよ!」
うーむ、あながち俺の上にハルヒが乗っているのも悪くない。 そこ、Mとか言うな。

「キョーンー いいじゃないのー」
「後でな」
「はぁ… バカキョン…」
残念そうな顔をするハルヒ
「もう一人で行くから…」
「お、おい待て」
「キョンはどうせ寝てたいんでしょ? そのまま永眠でもしたら?」
いわゆる死ねと…?
「後で行こう、な、ハルヒ」
「いや… もういいわよ キョンに冷めた…」
もう目が潤み状態のハルヒ
「わかった、わかったから!」
「無理しなくていいよ…? キョンは最初っからわたしの事が嫌いだったんでしょ? しょうがないから付き合ってくれてるんでしょ? 嫌々なら…もういいよ…」
「ハルヒ!」
俺は怒鳴った。
当たり前だ、こんな自分だけしか責めてない奴を放っておけるバカなどいない。
「いい加減にしろ!!」
ハルヒはビクッ!としてから俺の方を向いた。
「新年早々お前がそんなんでどうするんだよ!!」
「キョン…」
「ほら、俺もついて行くから、な」
「ありがと… でも…」
「まだ何かあるのか?」
「着替えなきゃ…」

なるほどね。



部屋の外で待たされること約十分。
部屋からハルヒが出てきた。

「ど、どう?」

どうもこうも…
見とれてしまうほど綺麗なんだが…
髪までちゃんと揃えてあり簪が刺さっている。
「可愛いな」
「そ、そぅ? キョンが言うなら本当かもね」
少し顔を赤らめるハルヒ。

「じゃぁ行きましょ!」





冷たい空気が肌に触れているだけで死にそうだ…
寒いっ!

「キョン… 寒いんだけど…」
「着物って温かくないのか?」
「私服に比べたら温かいけど…」
「ほら、これ貸してやるから」
俺は自分の首に巻かれていたマフラーを解きハルヒの首にかけた。
「いいの?」
「彼女が困ってるんだ、それくらい当然だろ?」
首辺りが凍えるように寒い…


「ついたわ」
楽しそうな顔をするハルヒ。
近くの神社までやってきた。
まぁ人もソコソコ歩いている。
そりゃそうだよな、正月だもんな。



「さっいきましょ、キョン」
「ん、あぁ」

グングンと俺の手を引っ張り歩いて行くハルヒ。
まぁ俺も今年一年を幸せに生きれるように精一杯願うさ。
去年も十分幸せだったんだがな。

「えっとお賽銭」
鞄の中をガサゴソとあさるハルヒ。
「ほら、出してやるよこれぐらい」
「そう? ありがと」
まぁたった10円でお前の笑顔が見れるなら安いもんさ。

チャリーン。
パンパン。

今年も幸せに過ごせますようにっと。
ハルヒは何を願っているのだろうか?
やはり地球を逆回転させろ、とか?
それともやはり宇宙人、未来人、超能力者関連か?
いつもすぐ近くにいるのにな。
多分それを知ったらハルヒは大喜びするだろうな。
ハルヒの笑顔=俺の元気
の方程式が成り立っているから俺は嬉しいが

「よっし、終わった」




「何をお願いしたんだ?」
お参りした後の定番の質問だ
「ん?知りたい?」
当たり前だ。
「じゃぁキョンから言って」
「俺は今年も幸せに過ごせますように ってな」
ハルヒの顔が少し沈んだ
「そっか…」
「どうしたんだよ…」
「わたしはね、キョンとずっと一緒にいられますように ってお願いしたの」
俺は後悔した。
再びお賽銭箱の前に戻ろうとしたが時既に遅し。
長い行列が続いている。
「すまん!ハルヒ!ちょっと待ってて!」
走り出そうとした俺の裾を持って
「ううん、いいよ」
しかしその顔には不安しか写っていなかった。
「だが・・・」
「いいわよ」
「本当にすまん。 俺はこれでもかなりお前が好きだからな?」
ハルヒはコクッと頷いた。
再び上がった顔には笑顔は無かった。
それに耐えられなくなった俺は


「き、キョン!?」
ハルヒを抱きしめた。 他人など気にせずに
「本当にすまん・・・」
「だからいいって言ってるでしょ!?」
「いや、本当は内心許してくれてないだろ?」
「それは・・・ そうだけど・・・ でもいいのよ」

トーンが下がるハルヒの声
その分俺の声が上がり
「お前のこと愛してるから!」

それはそれはもうかなり響くような音量で。
除夜の鐘さえも超えそうな音量で。

「は、恥かしいじゃないの・・・」
「うるせぇよ、お前が許してくれるまでずっとこうしてるからな?」
「じゃぁずっと許さないわ」

地雷を踏んでしまった。

「それ卑怯じゃないか・・・?」
「ううん、普通よ普通」
ハルヒの声に元気がみえてきた。

「はぁ、まったく・・・ じゃぁ許してくれたら家に帰ってずっとやってやるよ」
「許す!」
即答でした・・・

ふっ、とハルヒを離して我に返る俺。
予想通り通行人の視線は一点に集中されていた。
もちろんその対象は俺とハルヒ。
何か嫉妬のようなものも感じるが気のせいだろう。
そんな目でみるな・・・ 俺を見るな!

「人気者ね、キョン」

しらん、しらんっていうか知りたくない。
何を知るのか不明だが俺はこの状況から逃げたい、それだけだ。
いわゆる『穴があったら入りたい』ってやつだ。
なるべくでっかい穴をくれ。

「行くぞ、ハルヒ」
「あ、うん」

はぁー っと息を吐けば白くなりホワイトブレスが発生するのだが
「ねぇキョン」
「ん?」

振り返るとそこには接近してくるハルヒの顔が・・・ ってオイ。







本当は短いのかもしれない時間が長く感じた。




「いきなりかよ・・・ 心の準備期間ぐらいは欲しいぜ」
「そんなの必要ないわよ」
「いるって・・・」

ふふんっ、と笑うハルヒ。
「ハルヒ、楽しいか?」
「あったりまえよ! あんたと一緒にいられるだけで幸せ!」
「そっか、俺もだ」

お互いの手を強く握り締めた。




去年はハルヒと出会って、部活を作り野球大会にも参加し、映画まで作った。
色々やって本当に楽しい一年だったさ。 少なくとも俺はそう思っている。
今年も色々やるんだろ? 楽しみにしてるからな?

だから。


今年もよろしくな、ハルヒ。