新しい  1/1


「マヌケキョン」
「うるせぇよ」


なぜ俺がバカにされてるのかと言うと…
ただたんにヨロッとして肩を部室の黒板に当てただけだ。
最近寝不足なんだよ、いいだろ?

「ふーん、寝不足なんだ。 早く寝なさいよ?」
「はいはい」
「はい、は一回!」
「はい…」
「いいわよ」

まったく… なんだこいつは…
別にいいだろ?


それよりハルヒ、なんだそれ?
「見てわかんないの?」
わかるとゆうか…

ハルヒはパソコンを使っているのだが…
ハルヒの後ろに周ってみると。

『女性が男性に言われてみたい台詞』

「なんだこれ…」
「言われてみたい台詞」
「ははぁーん、 お前まも、やっとそうゆう感情を持ち始めたか」
「うるさいわね… 健全な女性なんだから当たり前でしょ?」
「感心感心」
ハルヒは俺を睨みパソコンに目を戻した。
とっ、思ったら再び俺の方を向いた… 輝いた目で…

「ねぇ、キョン!」
「なんだよ…」
「わ、わたしにこのサイトに書いてある台詞を言ってみて!」
「はぁ…?」
「じゃあ最初これ!」
ハルヒがパソコンに指をビシッとさした。
それより最初ってなんだよ…
俺はやらんぞ?

「はやくぅ…!」
なんでだよ…
てゆーか、ハルヒ… お前… 女の子っぽいぞ…?

ハルヒは俺の制服の裾を両手で握りブンブン振っている。
「女の子ってのは一度はこうゆう事言われたいのよ! だから、お願い」

なんか… ズキューン って… 打たれたんだけど…

まぁ一度だけならいいかな?

えっと… これか…

「お前が… いつも太陽みたいな笑顔をするから…? 俺はスクスクと育つんだよ…?」
なんじゃこりゃ… くさいにも程があるだろ…
しかしハルヒは効いたようで。

「くあぁぁ! キョン!あんた最高! 次これ!」
「もういやだ… 恥ずかしいだろうが…」
「キョ〜ン! これは団長命令よ!」
「やめてくれ… 頼むから…」
「コレ!」
そして再びハルヒはパソコンに指をさした

待てよ人の話聞けよ…
「早く、ね、いいでしょ!?」
「後… 一回だけだぞ…?」
「うん」
「お前が、、、」







「キョン、あんた結構似合ってるんじゃない?」
「なにが?」
「例えば… あっ! いい事思い付いちゃった!」
「ん?」
「じゃぁわたしは先に帰るわ!」

鞄を持ってハルヒは部室から飛び出ていった。
なんじゃありゃ…

「けっ… 結構かっこよかったですよ…?キョン君」
「そ、そうですか…?どうも」
朝比奈さんからお褒めの言葉がかかった。
まぁ嬉しいっちゃ嬉しいが…
「涼宮さんも結構効いてたと思いますが?」
「お前のほうが適役じゃないのか?」
「そうですか?」
お前の方が俺より何倍もカッコいいと思うがな…
自分で言うのも虚しいけど…

長門の本が閉じられた。







==================


次の日。

聞いてもとくに意味の無い教師の説明を聞き終えてとぼとぼ、と部室へ向かおうと教室を出ようとした瞬間。

「待ってキョン」

もちろんハルヒなわけなのだが。
なんかちょっとおかしくないか?
いつもなら絶対
『ちょっと待ちなさい』
とか言いそうなのに、いかにも女の子って感じだな…

「部室に行ったらコレに着替えといて」
紙袋を渡された。
「朝比奈さんに渡せばいいのか?」
ハルヒは俺をバカにしたような目で見ながら。
「あんたが着るの!」
「俺…?」
確かに、紙袋の隙間からは黒い衣装が見える。
男物のようだ。
「見ちゃだめ!」
ハルヒが ガバッと紙袋の開いていた隙間を閉じた。
「なんでだよ…」
「部室に行ってからのお楽しみ」
「着ない可能性だってあるんだそ?」
しかしハルヒはニシシと笑って
「無いわね、ちょっとキョンも着てみたいと思うわよ?」

そして紙袋に視線を戻してみた。
ちょっとだけ楽しみだけどな…
「じゃっ、わたし掃除があるから! 後は中に紙入ってるからその通りにして!」







そのまま部室までちょいと早歩きで向かった。


コンコンッ
「ぁっ、どうぞ〜」


朝比奈さんがいたか…

いや、長門もいるだろうけど。

「失礼しますよっと」
「今、お茶淹れますね」
「あっ、ちょっと二人とも廊下出てもらえます?」
「へ? どうしたんですか?」
何か面白そうなものを見るような顔で見ないでください…
「ハルヒのやつが着替えろって言って…」
「そうなんですか! 楽しみですねぇ」
なんで楽しみなんですか…?
別に変装するわけでもないんですよ?
だから期待には応えられないと思いますが
「頑張ってください」
バタンッ

さて、着替えますか。
紙袋の中から衣装を取り出した。
みるからに黒だな…

ペラッ…

紙が入っていた。
これか、何々…

『とりあえず全部着なさい!』

ハルヒらしい…

着替えようか。
白いシャツに黒いスーツとズボン…

『今回はあんたにホストになってもらうわ!』

まぢかよ…
ホスト…?
あのカッコいい人達だよな?
俺が? なぜに?


ちょっと着て見たい気もするが…


とか思ってたら既に着替え始めていた。
そこまで着にくくもなくてスラスラと着れた。

えっと… 何々…

『シャツは第二ボタンまで外す事』
既にやってあるから大丈夫…

『言葉使いは紳士的に、女性には名前の後に必ず『様』をつけること!』
様…か…

『部屋に入ってくる時は必ず『いらっしゃいませ』から!お客と接するように!』
う、ううむ…

『最後に! お客の命令は絶対!』
団長命令も絶対だった気が…


「あっれ? 二人とも中に入らないの?」
「あっ涼宮さん」
廊下から会話が聞こえた。
「三人とも入っていいですよ」



ガチャッ

確か… いらっしゃいませ だよな…?


「いらっしゃいませ、涼宮様、朝比奈様、長門様」

三人とも部屋と廊下の境目で唖然としていた。

お客と接するように… だよな…?
こんな唖然と立ち尽くす客にどう接すれば…?

「あの、どうかなされましたか? お嬢様たち」
なんか調子こいて要らない言葉まで付け足してしまった…

ハルヒは口を魚みたいにパクパクしていた。
朝比奈さんは目を見開いていた。
長門もこちらを、ずっと見ていた。

まさか…
あまりにも似合わなくて出る言葉も無いとか…?
それならちょっと悲しいぞ…?
残念ながら部室には鏡が無いため、自分の姿はよくわからない。


「お嬢様?」

ハルヒが正気に戻ったようで
「キョン… だよね…?」 とゆっくりと歩きながら。

失礼なやつだな…
どっからどう見ても俺だが?
ちょいと試してみるか。
「今日もお綺麗ですね、涼宮様」

再びハルヒの足は止まった。
何がしたいんだよ…

「キョン君…? お茶いれましょうか?」
朝比奈さんがやっと動いた。
でも確かお客なんだよな…
「俺がやります、お嬢様方はお座りください」

スタスタとポットのある場所まで歩いた。
後ろではガタガタする音がよく聞こえる…

お茶の葉はどれ使えばいいのだろうか?
お茶…?
客なんだよな。
しゃーない、ミルクティーでも入れてやるよ。




「お待たせしました」
まずは朝比奈さんの所に
「あ、ありがとうございますっ!」
顔が真っ赤ですよ…?


次は長門
相変わらず読書しているな。
「どうぞ」
「…ありがとう」
お礼を言われてもな…


次は、ハルヒだな。

「どうぞ」
「あ、ありがとう… あの…」
あの… !? なんだその可愛らしい声は!?
「あっ、なんでもないわ!」
「そうですか、俺に出来る事があるばなんでもどうぞ」
「えっ、あっ、はい」
ハルヒか壊れたようだ。

パイプ椅子に座ってみた。
向かいの席に朝比奈さん、団長席にハルヒ、端のテーブルにある椅子に長門。

いつもと変わらない席順。
しかし沈黙しか流れなかった。
なんだよ… 俺に問題でもあんのか…?


「ふぅ…」
溜息をついてみた。
するとハルヒが
「あ、あのキョンさん!」
まて、今なんつった…?
さん…?
「キョンでいいですよ?」
「あ、じゃぁキョン! お話ししませんか!?」
ハルヒも客とゆう事だから敬語使ってんのか?
めっちゃもじもじ… してる… また可愛い…

ハルヒが早足で来て俺の隣のパイプ椅子に座った。
「そんな焦らなくても逃げませんから」
なかなか板についてきたな… 俺。

「き、キョンさん! わたし涼宮ハルヒっていうの! ハルヒって呼んでください」
わかってるって…
でも客だよな。
「ハルヒさん、で、いいですか?」
「あっ、はい!」
なんじゃこりゃ…
なんかいつものハルヒとギャップがありすぎる…

客を褒めるのも仕事だよな。
「ハルヒさんは可愛いですね、一目惚れしそうです」
ハルヒの顔が真っ赤になった…
「あ、あ、ありがとぅ!」
歯切れが悪いな… ハルヒらしくない…

「キョンさん、ちょっとだけ… 頭撫でてもらえませんか…?」
だから『さん』はいいっていってんのに…
それより… 頭撫でるって…
しかし客なんだよなぁ…
大変だな… 俺…

「これでいいですか?」
「うん、ありがとう」

すると朝比奈さんが
「キョン君、わ、わわ、わ、私もお願いします!」

なんじゃこりゃ…
「私もお願いしたい」
長門まで来た…

おぅい… 古泉〜 来てくれ〜
なんで今日に限ってこないんだよ…
他人からみれば羨ましい限りだろうな…

「ちょっとトイレ行って来ますね」


バタンッ。

ふぅ… やっと一息…
もちろんホスト姿で部屋を出た俺…
誰かに見られたら… やばいな…

「あの!」
嫌な予感がしまくっていた。
「メルアド教えてくれませんか!?」
息を荒げている女性が立っていた。
見たところ上級生のようだ。
「俺… ですか?」
「はい!」






まぁ教えてしまったわけなんだが…
更に写メまで撮られてしまった。

さて、トイレ、トイレ…



そういえばプリントに、まだ何か書いてあったな。
何々?
『女性が一度は言われたい台詞』?
まぢかよ…

しかもどれも恥ずかしいものばかり…
一つぐらい使ってみようかな?





バタンッ
「お帰りなさい」
なぜ敬語を使うんだよ… ハルヒ…

ハツヒは携帯を片手に
「しゃ、写メ撮ってもいいですか!?」
「えっ? あっはい、どうぞ」

パシャッ

本日二枚目・・・





「あの、ハルヒさん」
「なんですか?」
「そろそろ終わりません?」
一応、まだ客と接する感じでいよう。

するたハルヒは何かに気付いたような感じで
「き、キョン!?」
「ぇ、そうですが?」
「ぅぁぁぁぁ…」
完熟トマトのように顔が赤いハルヒ

「キョン… なの…?」
「ん?」

「キョン…」

今言ってやろうか。 まぁ丁度いいかもな。

「ハルヒさん」
「え?」

恥ずかしいんだよなぁ…

「あなたと会えたのも神が決めた運命だ。 俺は神なんて信じないが君に会えた事がとても幸せだよ」
ぁー くさいなぁ…

ハルヒは更に口をパクパクさせている。
ぁー、やっぱくさいよなぁ… 言うんじゃなかった…

「さ、最後のお願いしても、いいですか!?」
「はい?」
「わ、わ、わたしを抱いてください!」

もう完全に壊れ気味のハルヒ…
客なんだよなぁ… せこいよなぁ…







「あ、ありがとう…」
「どういたしまして」

俺は部室から紙袋を持って飛び出た。

もう廊下で着替えようか。






ギギィー… ガチャン。
「お帰り… キョン」
言葉使いが直ったハルヒ
「ほら、返すよ」
ハルヒは首を横に振った。
「なんでた?」
「よ、よかったら… これから毎日これ着てくれない…?」
「気に入ったのか…?」
ハルヒは頷いた。

「まぁ… たまに… なら」
「約束よ!?」

そこまで声を上げなくても…





まぁ実際恐ろしい一日だったんだが…
家に帰ってから早速お電話が着た。

もちろん相手は、ハルヒ。

「なんだ」
『あの… キョン… 部室で喋ってたような感じで『おやすみ、ハルヒ』って言ってくれない…?』
「俺が?」
『それ意外誰がいるのよ』

まったくな… やれやれだ。
「おやすみ、ハルヒ」












翌日。

教室に入りハルヒと目が合った瞬間
「キョン、今日もお願いね」

少しだけ可愛く俺にお願いをするハルヒ。
いつもなら
『キョン、着替えときなさいよ』とか
『キョン、着替えてないと死刑だから』とか…

命令口調ではなくてお願い状態。
俺がどれだけハルヒがこうゆう風になってほしいと願っていた事か。

「どうしたの?」
「いーや、なんでもない」
「何かありそうね…」
「恋愛について考えていたところだ」
まるっきり嘘ですけどね。
「ふーん、あんたもそうゆうこと考えてるんだ」
少しバカにされた気分だが… まぁいい。










部室についた俺は、とりあえず部屋にいたメイドと読書してる人に廊下に出てもらった。

今回は迷う事なくスラスラと着替えを済ませた。

「キョン〜 もう入っていい〜?」
ハルヒの声かよ… いつの間に来たんだよ。

「どうぞ」

ガチャッ

さて、お客なんだよなぁ…
「いらっしゃいませお嬢様方」
ぁー 恥ずい…

今回ハルヒはピタッと止まったがすぐに再起動した。
「キョン、ボタン」
ん? あっ、忘れてた。
よく気付いたな…
よしっおKだ。

「これでいいだろ?」
再びハルヒが停止した。
「おぃ、どうした?」
なにしてんだこいつ…
もう目が点状態じゃないか…
似合わないなら似合わないって言ってくれたほうが嬉しいのだが…
「やっぱ似合わないだろ?」
「えっ、あ、に、似合ってます!」
本当にどっかいかれたんじゃないのか?
ハルヒが俺に対して敬語を使うなんて…
客て接する感じで… だったな…

「失礼ですが、お嬢様、どこか具合が悪いのでは?」
「だ、大丈夫! それよりお話しませんか!?」
やはりおかしいぞ、ハルヒ…
「お、お茶淹れましょうか?」
と なんだか戸惑い気味の朝比奈さん。
「いえ、お嬢様方はお座りください」
今更だが俺は接客がなかなか上手いかもしれない。
まぁバイトでもしてみるかな。





ふぅ…
やっと三人に俺特製ミルクティーを配り終えた…
これだけで体力切れそう…

「あ、あのっ キョンさん、隣に行ってもいいですか?」

なぁハルヒ…
今の俺って、違う俺なのか?
キョンさんってなんだよ…

「ど、どうぞ?」

そう言った瞬間にハルヒは俺の近くにあったパイプ椅子を引いて座った。
ハルヒ〜 顔真っ赤だぞ…?
「き、キョンさん…」
「はい?」
「今… 彼女とか好きな人とかいますか…?」
いないって… お前が一番よく知ってるはずだがな…
「いませんけど?」
するとハルヒは「ふぅー」と溜込んでいた息を吐いてから。
「か、彼女は欲しいですか?」
そりゃー 男なら当然だと思うけど…?
「出来るなら欲しいですね」
俺は手に持っていた特製ミルクティーを口に含んだ。
「わ、わたしじゃだめですか!?」
「ブハッっ!」
吹き出しそうになった… 危ない危ない…
今… こいつ… なんつった…?
朝比奈さんも長門もハルヒを見ている。
そのハルヒは顔を真っ赤にして俺の目をずっと直視している。
目を逸らしたら負ける… 何に負けるのかしらんがそんな感じだ。

「あ、ハル・・・ヒ・・・?」

じっと俺の目を見つめるハルヒ・・・
耐えれん・・・

「あの、ハルヒ・・・? さん、ちょっといいですか?」
「なんですか・・・?」
「俺でいいんですか?」
「いいわよ・・・?」
「それよりも俺なんですか?」
「どうゆう意味・・・?」
「元のキョンでは無くて今のキョンなんですか?」

ハルヒが「うっ・・・」と言葉を漏らしてうつむいた。 そして沈黙が流れる。

「俺は正直ハルヒでもいいと思ってる」
「へ?」
ハルヒの顔がふっ、と上がり俺の顔を見た。
「ハルヒがここまで引っ張ってくれたから俺は今の幸せを感じれるんだ」
「・・・」
「ありがとう、ハルヒ。 俺にとってお前は女神だよ」
我ながらくさい言葉を言ってしまった。
まぁいいけどな、これは『キョンさん』なんだし
「なにそれ・・・」
「ん?」
「それ口説いてんの?」
「そうかもな、まぁホストらしく」
「そっか・・・ 本音じゃなかったのか・・・ ちょっとがっかりだな・・・」

なぁハルヒ。 俺は本音で語ったつもりなんだけどな? この『キョンさん』もお前の事が好きみたいだ。
だから今の俺は何も出来ないんだよ。

「なぁハルヒ、俺がこの姿になってから急に態度変わったよな?」
「そ、そう?」
「なんかこの姿微妙か? 可愛いお嬢さん」
さぁどうだ? 
「あ、あああ、あ、ありがとう!」
どうやら・・・ ハルヒは甘い言葉には弱いらしい。
女の子はそんなもんかな?
「なぁ、手を握ってもいいか?」
「え?」
「少しでも貴方の体温を感じたいんだ」
なんか言ってるこっちが恥かしいんだが・・・ てゆーか、おい・・・
「え、えぇえ!? へ!? あ、はい!」
「ありがとう、天使さん」
待て、俺・・・ なんでだ・・・
「てん・・・し・・・?」
「いや、俺の神様♪」
「おれ・・・の・・・・・・・?」
俺・・・ どうした・・・? 口が勝手に・・・ なんでだよ!
「そうだが? 嫌ですか?」
「い、いいい、嫌じゃないわ! 嬉しい!」
そうか、なるほどね。 『キョンさん』が爆発したようだ。 制御不能ってわけか。


理由を教えてくれ。

「神様、俺の言うことを叶えてくれないか?」
「な、何?」
「あなたと永遠にいたい」

はてさて、もう完熟しすぎたトマト色の顔になったハルヒの顔。
視界に入ってる限りだと朝比奈さんも真っ赤・・・ 長門は見えない。
それより・・・ 俺? 何言ってんだい? いい加減にしないと玉潰すよ?
自爆することになるけど・・・

「永遠・・・?」
「そうだ、永遠に、あなたを感じていたい」
「キョン・・・?」
「俺はあなたを愛している、大好きだ」

もう完全にいかれたな・・・ 電池の切れたおもちゃに霊が入った感じだ。
ハルヒも真に受けるな・・・ 流せ!流すんだ!

「わ、わたしも・・・ キョンが好きだけど・・・?」

受け取っちゃった・・・!? ハルヒよ・・・ 少しは団長らしくだな、オイ。

「綺麗だよ、ハルヒ」
「ぇっ・・・?」

ハルヒの口を塞ぐかのように接近する俺の口。

って待てよ!!! 待て!俺2! 早まるな!
ふんぬぅぅぅう! 動かん! 前!後ろ!横!
隊長!うごきませーん!

「んっ・・・」
ハルヒも目を瞑った・・・ よーけーろー!
残り10cm・・・ 5cm・・・

人生でこれほど悩む日は無い。
今日は家に帰ったら早く寝よう。
諦め半分の俺。

「あっ、待って」
「ん?」

ハルヒが急に唇同士の間に手を入れた。

「今って、キョン?キョンさん?」
「どっちでもいいだろ?俺はお前を愛してるんだから」

俺ってさ、恥かしいよな。 ほんと・・・
それよりも朝比奈さんも長門も見てるのによくやるよな・・・

「だめ」

そんなハルヒの一言だった。

「どうしてですか?」
「わたしはキョンが好きなのよ。 確かにルックスは今のほうがいいわ」
「だったら!」
「いつものキョンの方がいいのよ、あんたは何かしっくり来ないわ」
「そうか・・・」
「まっ、どうせキョンなんだし変わらないだろうけど」

ハルヒ、嬉しいんだけど。
俺の今の状況がわかってるかのような発言だな。

「ハルヒ、お前は俺じゃなくて元の方を選ぶんだな?」
「まぁそうなるわね」
「はははは、残念だ! まぁ結構楽しめたしよかった!」
「そろそろ消えるのもいいと思うけど?」
「そうか? もうちょい遊びたかったんだけどな」
「多分向こうも楽しいと思うけど?」
「まぁそうだな、ありがとうな、ハルヒさんとやら」
「いいわよ、またいつでも遊びに来なさい」
「そうさせてもらう、じゃぁな、キョンとやらとお幸せに」
「ええ」

何言ってんだ? まったくわけわからんのだが。
すぅっ と体が動くようになった。

「なぁ、ハル」
「何も言わずに続きをして」
「本気か?」
「うん」

人前というのに・・・ なんだこれ・・・








「ありがとね」
「どういたしまして」

「キョン、その格好いいわね、これからも着てね」
「ん? まぁいいが?」
「ちょ、ちょっとだけでいいからさ・・・ なんか口説き台詞言ってくれない・・・?」
「はぁ?」
「なによ、ならいいわよ!」
顔を赤くするハルヒなのだが。 まぁいいさ
「ハルヒ」
「何?」
「俺はな、ハルヒ、お前が






















後々聞いた話なのだが。
「あ、あれ?」
あれ、ってのはハルヒと話していた誰かの事だ。
「実はあのホストの服さ、持ち主が急な死で他界したらしいのよ」
またとんでもないお話だことで
「で、ネットで見つけたのを購入したわけ、でも着ても何も起こらなかったのよ」
なんでそんなものを購入するんだよ・・・ 普通にいらないと思うが・・・
「で、俺に着させたのか?」
「そうよ、見事に霊が取り付いたわね」
あぁ・・・ よく考えたら恐ろしい事だな・・・
それよりなんでお前は俺の異変に気づいたんだ?
「キョンがあんな事言うと思う? 絶対に無いわね」
「失礼なやつだな・・・ あの後一回言ってやったじゃないか」
ハルヒは「はぁー」と溜息をついてから
「本物のホストの霊と比べたら天と地程の差があるわね」
これから勉強しますよ。
「それならいいけど」








で、次に長門から聞いた話。

「昨日あなたの体に進入していたイレギュラー物質はあなたたち人間の言う『霊』というもの」
「特に悪影響も無いと思われたため私は手を出さなかった」
「今後、あの服を着用しても同じ症状が起こることは無い」
「だから心配せず、着るといい」


一回ぐらいかんでもよさそうな台詞だな・・・
それより『着るといい』ってまつで着て欲しいって感じの台詞だな。
「長門はあの服を着た俺をどうおもった?」
「上手く語源化出来ない」
「そうか」
「だけど・・・」
「ん?」
長門は喋るのを止めた。
「気にしないで、ただのミス」
「そっか、ありがとな」
「別に」





朝比奈さんに聞いてみた
「あの時、何か霊について感じましたか?」
「ま、まったく気づきませんでした、すいません・・・」
朝比奈さんはペコッと頭を下げた。
「いえ、別にいいんですよ」





古泉に聞いてみた
「どう思うよ」
「涼宮さんが望んだんじゃないでしょうか?」
「霊の事か?」
「違いますよ」
「ん?」
「あなたに、あんな甘い台詞を言われたい。 と、じゃないですか?」
「あり得ないな」
「断定は出来ませんよ?」
ニヤっと笑う古泉・・・
「お幸せに」

大きなお世話だ。





結局、あの霊は何なのか。
まったく不思議でしょうがない。
まぁまた会えたらいいけどな。
そしたら俺は一番最初にこう言うぜ?
『口説き方教えてくれ』ってな。


まぁハルヒの事だから浮気したら殺されるだろうがな。

「キョーン、入っていいー?」
「ん、いいぞ」


ギィィィ…

「どうだ?」
「どうだ、じゃないわよ、お客が来たのよ?」
まだ続いてんのか…






「ハルヒ、またあの霊に会いたいか?」
「それよりさ… ホストらしくしてよ…」
不機嫌そうな顔のハルヒ。
「はぁ… お嬢さん、今日も可愛いですね」
「そう?」
なんかハルヒも慣れたようで普通に会話している。
「ハルヒさん、いや、女神」
「え?」
「俺の願いを叶えてくれ」
「なに?」
「ずっと一緒にいてくれよ?」

ハルヒは鼻で笑った。

「当たり前よ、あんたを手放すなんてもったいないわ」
そこまで言ってくれるのなら嬉しいがな。
「ねぇ、本気でホストやってみない? わたし専用の!」
そんな満面の笑みのハルヒを見ながら苦笑した。
なんせ今その状況だしな。
「ご注文はどうしますか?」
「そうね、キョンをちょうだい」
そんなの隠しメニューの裏メニューにもありませんっ。
「代金は結構高いぞ?」
「そん時は体を売るからいいわよ」

とんでもない事をスラスラ言うやつだな…
「はぁ、やれやれ…」
「じゃぁ違う注文!」
「なんだ?」
「わたしを口説いてみて!」
「なんでだよ…」
「それも仕事の一つよ!」
「俺は涼宮ハルヒが…」






なるべく早く来てくれ、霊よ。
もうコストが無いんだが…

「くうぅぅ、キョン! カッコよすぎ!」
そうハルヒが言い放ち俺に飛び付いて来た。
もちろん俺とハルヒ以外はまだ部室に来ていない。

「そりゃどうも」
「もう決めたわ! あんたこれからわたしの家来なさい! 専用ホストとして雇ってあげるから!」
「雇うって…」
「あはぁ… キョン…」
色声は卑怯だぞ…

「もうわたし… あんたにメロメロかも… 大好き」
「そうか、でも俺は残念ながらまだ職に就く気は無い。
「じゃぁ今だけは専用ホストでもいいでしょ?」
「まぁそれならな…」
「もっかい口説いて…」
「勘弁してくれ…」
「いいから! はやくぅ!」
「もうネタが無いのです!」
「わたしを満足させるまで帰さないからね!」

今日は帰るのが遅くなりそうだな。





まぁあんなこんなで付き合う事になった俺とハルヒなのだが。
俺がハルヒの家に行くと100%あの服で居させられる。
少々慣れたけどな。

「キョン」
「ん?」
「お客の願いは叶えるものよね?」
「まぁな、出来る範囲だけど」
「そっ、出来るから大丈夫よ」
なんだ? 何がしたいんだ?
「今日、泊まってって。 そんでずっとその格好のままでいて」
「泊まる? 俺が?」
「そうよ、他に誰がいるのよ。 安心して、今日親は仕事で帰って来ないから」
いや、そうゆう意味じゃなくてだな。
お年頃の男女が一つ屋根の下で二人っきり。  この状況どうよ?
「暴走・・・ もありえるわね」
「暴走って・・・」

どちらが先に暴走し始めるのか楽しみだけどな。

しかし。

俺から暴走しそうだ・・・ まぁ出来る限り抑えるけどな・・・

「キョーン」
「なんだ?」
「一緒にお風呂はいろ〜」

笑顔でとんでもない事を言うハルヒであった。
まぁ今更遅いんだがな。

「いってらっしゃい、お嬢様」
「む〜、何よ〜」
と頬を膨らませ怒ったような顔のハルヒ

「お客のお願いよ?」
「無理なものは無理」
お前の・・・ その・・・  ・・・姿みたら・・・ 俺はもうリミッター外して暴走するからな?
「キョンが? あんたにそんな勇気あるの?」



その後ハルヒを押し倒したのは事実だが。
何もしてないがな? ただ俺にも出来るって事だけ見せたかっただけだ。

「な、なんでよ・・・ やるんだったらやろうよ!」
「やりませんよ、あなたに純粋以外の言葉は似合わない」
などと決めておく俺
「だったら今はなんでもいいわ! やってよ・・・」
はぁ・・・ やれやれ・・・だ。


「じゃぁトイレ行ってくる」
「え、なんでよ。 逃げるの!?」
「仕事なもんでお客に手は出せませんよ」

逃げたな、俺。