涼宮ハルヒの幸福9 12/22



人間って死ぬ前はやり残した事がしたいものだ。
腹いっぱいステーキ食いたい、一日中ゲームしたい
などとゆうものは無い。
俺が唯一やりたい事。


ハルヒと思い出が作りたい。


これだけだ、これさえ叶えられるなら俺は…
出来るのなら何年も何年も作りたい…
本当は死ぬのが怖い。
だがらといって今ある時間を無駄にしたくない。死んでも後悔しないように。


「顔色悪いわよ?」
「あ、あぁすまん」
「なんで謝るのよ」
「色々と、な」
「んぁ?」

不思議そうなハルヒの顔を眺めなら俺は苦笑した。
笑いたい。 笑って全てを終えたい。

「なんで笑うのよ!?」
「笑いたい時は笑うのが一番だろ?」
「笑う理由を聞いてんのよ!」
「理由か、ハルヒが理由だな」
「はぁ? わけわかんない事言ってないでさっさと教えなさい!」

笑う。 その裏には深い悲しみだけしかない。
泣きたい。
辛い。

それだけじゃない。
俺が死んだらハルヒが悲しむんだよな…
今にも胸が潰れそうだ…

「キョン、あのさ」
「なんだ?」
「今あんた何か秘密を持ってるでしょ?」
「秘密か… あるかもな」
「浮気… はしてないよね…?」
「してない」
「じゃぁ何?」

言えるか馬鹿野郎。
お前には悲しんで欲しくない…

「辛い事があったら言いなさいよ?」

辛い…

「ぅっ…」
「どうしたの!?」
「ぁぁ、大丈夫…」

吐き気が一瞬した…
だめた… 精神力が保たない…



『少しはわたしに頼りなさい』



高校時代のハルヒの一言が脳にこべりついている。
頼りたい… 少しだけでいいから…
このハルヒの優しさを大切にしたい…

「お願いがある」
「なによ?」
「少しの間だけでいいからハルヒを貸してくれ」
わけわからない言葉だ…
「どうしたの…? 大丈夫…?」
「情けない姿を見せるかもしれないが許してくれ」
「わたしは… キョンの全てが好きだから別にいいわよ?」

情けない… 彼女の前で泣くのは二回目だ…
心境が不安定すぎるんだ…
心配、不安、恐怖。

ハルヒは優しく俺を受け止めてくれた。
「キョン、、、キョンは何やっててもキョンなんだからね? わたしはキョンが好きなん
だからね?意味分かる?」
「ハルヒ…ハルヒ、ハルヒ!」
「笑っても、泣いても、怒っても、わたしはキョンが好きなんだからね」
「ありがとう、ありがとうハルヒ…、すまない…」
「イヤよ、謝るキョンは嫌いよ」
「そうか、それならしゃーないな、ありがとう…」
「まだまだ子供ね」
「じゃぁハルヒは母親か?」
「まぁそうなるわね」
「かあーさん、甘えていいか?」
甘えたいんだよ…
少しでも多く…
「子供の頼みなら聞くわよ?」
「このままいさせてくれ」
「いいわよ?」

数分そのまま動かなかった。
その時間が幸せだった。
いや、ハルヒといる時間全てが幸せだ。

「あんた寝不足なんじゃない? 多分疲れてるのよ」
「俺、世話かけっぱなしだな」
「子供だもん、しょうがないって」

どうせ子供ですよ。
だけどな、ハルヒ。
子供にしか出来ない事だってあるんだぜ?
親が泣いたらみっともないからな?
親が言い訳したら情けないからな?

「ハルヒ、俺の頼みを3つ聞いてくれ」
「いいわよ」
「俺が急に死んでもいいように今のうちに俺に甘えろよ?」
「何それ? わたしより先に死んだら地獄に送るからね」
「2つめ、俺にも甘えさせてくれ」
「いつでもいいわよ?」
ハルヒは腕を組んで俺にほほ笑みかけた。




俺は決心した。
何を言われようが、全てを話す。
ハルヒに嫌われようが、避けられようが、殴られようが…
ただ考えてほしいんだ。
残りの時間の過ごし方。

俺とハルヒの一秒、一秒を。




最後の、幸福の時間を。