涼宮ハルヒの幸福5 12/12



「で、何が言いたいのよ?」

そんな不機嫌そうなハルヒの顔を見ながら

「だからやめてくれ」

ハルヒはますます顔が曇ってきた。

「なんでよ?」

なんでよ? じゃねぇ
お前今何しようとしたかわかってんのか?

「わかってるわよ」

いーや、わかってないね。
ここは学校だぞ? しかも自分のクラス。

「だから?」

やめろ、やめて、やめてください。

「嫌」

終わった…  我が学園生活はこの先どうなることやら…

しかしクラスで巻き起こったのは歓声、口笛 の嵐…
まぢかよ…








時は数分前

「キョン、なんか口の周りに付いてるわよ?」
「んぁ?」

昼飯時の事だ。
俺はハルヒと机を並べてハルヒの手作り弁当を楽しんでいた。

「いいわよ、動かないで、取ってあげるから」

ハルヒが席を立ってこちらに向かってきた。
別に立つ必要は無いんじゃないか?

「じ、じゃぁ…」

ハルヒが口を近付けてきた。
何っ!?

ごごごごごごごごと迫るハルヒの唇
待て待て! この前学校ではキスはやめろって言ったばかりだぞ!

しかしハルヒはお構いなしに迫ってくる。

だが。
俺は唇が触れる刹那で回避した。
まだまだだね…
俺の唇はそう簡単には捕まえられないぜ?

「な、なんでよけるのよ…」
「この前学校ではキスはやめろと言ったはずだが?」
「そんな約束知らないわよ」
「頼むからやめてくれ」
「なんでよ?」
「だって…ほら…な…?」

ここから冒頭に戻るわけだ。


















学校でキスをしてしまった…
しかもロングタイム…  もちろんクラス全員の目を引きつけたわけだが…
まさかここまで歓声が沸くとは…
『キョン死ねー!』『キョンの馬鹿野郎!』とか言われるかと思ってたが…

「んー、んんー」
さすがに苦しくなったので呻き声を上げた。

「学校でしちゃったじゃない」
「お前なぁ…」

ハルヒは満面の笑みで俺に抱き付いてきた。
もうどうとでもしてくれ…
キスしたんだ… これくらいなら別に変わらんだろ…
それより視線が痛い…

キャーキャーワーワー騒ぐ中でハルヒは満足そうに俺の胸板に顔を擦りつける。
俺の人生は正しい方向に進んでるよな?
























「イレギュラーが発生した」
部室で長門の第一声だ。
「次はなんだ…」
「涼宮ハルヒの好奇心の向上」
「普通な事じゃないのか?」
「普通とは思えないスピードで上がっている」
「なんじゃぁそりゃ…」
「全てあなたに対するもの」
横からスマイルマンが入って来た。
「つまりあなたにもっと愛されたい、どうすれば愛してくれるか、とゆうことですよ」
「今でも十分に愛してるつもりなんだが」
「足りないんですよ、きっと」

スマイル100%のキザ青少年の発言が正しいのか、正しくないのか…

「最近はよく涼宮さんと学校内でもイチャついてると聞きましたが?」

9組にも知れ渡ったのかよ…
言ったやつ誰だ…  力いっぱい殴ってやる…

「はっくしゅん!」
廊下から聞き覚えのあるくしゃみが響いた。

「ぅ〜 寒いわ…」
入って来たのはもちろんハルヒ
朝比奈さんは居ないので温かいお茶が貰えないのが残念だ…

ハルヒは何か閃いたような顔をしてから早足で俺の後ろに周った。

「ハルヒ、抱き付い、、、」
後ろから抱き付いて来た…
「てきたら怒るぞ…」
どんどんトーンが下がった俺の声。

「キョンあったかーい…」
俺で温もるな…
そして胸が当たっとる…
しかも逆に俺の方が暖まる…

古泉が笑顔でウィンクしてきた。
気持ち悪い…やめろ…

「ちょっとキョン、後ろからだと疲れるわ」

前からは却下だ。

ハルヒは「むー」と声をもらして俺の首に手を回して来た。

「ちょっと数分このままね…」
「はいはい…」

古泉は困った顔をしながら
「ちょっと用事思い出したんで帰ります」 と
長門も古泉に続き部室から出ていった。

バタン…

扉が閉まった瞬間

「キョンが前から抱いてくれたら暖まるかも…」
「寒いのか?」
「…すごく…」
「ならいいぞ…」
二人っきりなら構わない。
俺も寒いからな。 暖まるだけだからな?

「暖かい… キョンの鼓動が…  ってちょっと早くない…?」

知るか。 自分の鼓動回数が調節できる人なんていたら是非とも紹介してほしいね。

「キョンって…」
「なんだ?」
「大学は何処に行くの…?」
「何処行こうかな…」

志望校は無理と教師に言われて落込んだ俺。

「あんましレベル高い所には行けないかもな…」
「…」
「ハルヒはレベル高い所行けよ?」
「いや…」
「は?」
「キョンと違う学校なんていやよ…」
「お前… これだけは自分の将来の事だ、自分の進みたい大学に行け」
「私が行きたいのはキョンのいる大学…」
「なんなら別れてもいいから自分の道に進め、俺は自分のせいで他人の人生を変える事だ
けはしたくない…」
「別れるなんてやだよ…」
「俺もいやだ… だがこればっかりは…」
「私は…キョンが好きなの… だからお願い… 別れるなんて言わないでよ…」
「すまん…」

ハルヒはものすごい力で抱き締める…

「もし突然消えたりしたら死刑だからね…」

消えたらどうやって死刑するのだろう…  んな事はいいや…
消えるものか… 消えてたまるか…

「ハルヒ、頼みがある」
「何…?」
「勉強を教えてくれ、一緒の大学行くなら少しでも上を目指そう…」
「ぅん…、その代わり絶対に消えないでよ…?」
「消えるかよ馬鹿野郎…」
「バカとは何よ… バカキョンのくせに…」
「消えてやろうか?」
「嘘ょ… バカ…」

バカ言うなよ…

「これから先もよろしくな」
「何言ってんのよ… 永遠によ…」

永遠か、そうだな。







さきほどの状態から変わらず長い時間が経った。

「熱くなって来たわ…  キョン、体を冷ましなさい…」

不可能な…

「そろそろ離れてよ…」
その言葉からは不本意とゆう感情が伝わってきた。


残念だ。 離れたくないんだが…

「じゃぁもう少しいいわよ…?」

素直じゃないやつだな…
俺は手を空中ぶらぶらしてる。
つまり抱き付いているのはハルヒだけ。  まったく…

「キョン」
「どうした?」
「勉強頑張りなさいよ?」
「あぁ」
「ご褒美だってあげるからね…」

ご褒美ってなんだよ…
そんなものいらない、ハルヒが俺の勉強を見てくれるだけでいい。
いや、側にいてくれるだけでいいんだ…

俺とハルヒの…




未来のために。