宝物が目の前にあるならば人間誰でも飛び付くだろう。
もちろん俺だ。

「苦しいよー」

俺は現在宝物を抱いている。

「あんたね… いくらなんでも欲張りよ」

「別にいいじゃないか」

「春奈?パパとママどっちが好き?」

俺の胸の中からピョコッと頭が飛び出して
「どっちも好き!」
と。

嬉しいねぇ…








多分現在PM9:30ぐらい。
春奈を最近は九時前後に寝かしておりそれと共に俺もハルヒも就寝。
あまり寝られないのだがしょうがないだろう。

場所はダブルベット。
春奈を挟んで三人で寝ている。


日に日に春奈はハルヒに似てきている。
カチューシャを付けたらミニハルヒだ。

「パパ?」

「あんたねぇ… いい加減離してあげなさいよ」

俺の頭にピンッときた一つの予想。
多分今頭の上に電球が出てきたはずだ。

「嫉妬か?」

「しっとって何?」

「んぐうっっっっ!!」

「どうしたのパパ?」

布団の中から蹴りが…
しかも見事に股を通りクリティカルヒット。

「おま… お前… それは無いと思うぜ…?」

「春奈、パパが今ね、ママにキックしてきたのよ。 どう思う?」

「パパひどーい」

言いたい放題言いやがって…
キックされたのは俺だ…
そういやぁ… ハルヒって… Sだったな…

「なんか言った?」

「何も…」

暗くてよくわからないがハルヒの顔が脳内に映されている。
怒ってんのか…?

「スー…スー…」

胸の中から寝息が。

「おやすみ春奈」

腕から解放してやり俺と位置を変えた。

「ほらハルヒ」

「な、何よ…」

ハルヒの近くにより腕を広げてやった。
俺の予想じゃ嫉妬なはずだ。 さぁ飛び付け。

「っくぁぁぁあ!!!!」

本日二度目のクリティカル。
俺のやつが潰れる…
しかも… こいつには手加減という言葉を知らないのか…?

「このド変態!」

ハルヒに少しでもいい気持ちになってもらおうと…

「それが変態って言ってんのよ!」

今のは失言した… 失礼…
少しでもハルヒに気に入られたいから?

「もう… 私はあんたが大好きなんだから大丈夫よ!」

「ハルヒ!」

逆に俺から飛び付いてしまった。
春奈よりは抱きにくいがそれなりによかった。

「春奈ばっかりずるいわよ… これからは私にもやってよね…」

「やっぱ嫉妬じゃないか」

むっとしたハルヒの顔が目の前に現れた。

「次に嫉妬って言葉を使ったら離婚ね」

「なっ…」

嫉妬が禁句になってしまった…
しかも離婚!?
俺は大変な地雷を踏んでしまったようだな。

「もっと、ぎゅっとやってよ」

こんな甘えるハルヒは俺は大好きだ。
見てるだけで幸せな顔をしてくれるからな。

「んー」

ハルヒは唇を前につきだしたのでそのまま俺も。
「パパー」

「んぅっ!?」

背中に抱き付く春奈。
なんだ… 寝ぼけてんのか…
本気で驚いたぞ…

「どうしたの?」

「なんでもない、いくぞ」

「え? って、んんー!」

ハルヒの準備の整っていない唇を奪ってしまった。
うーむ… あまりいい気がしないな…
なんかハルヒの顔が曇ってる…

「あんたね… こんな子供のキスで私が満足すると思ってるの?」

「どういう意味だ?」

「こういう事よ!」








子供の前なのに… 寝てるが…
こんなバカップルみたいな事してていいのか?


「んっふ♪ 満足よ。 おいしかったわ」

何がおいしくて…
何が『んっふ♪』なのかわからない…

ただ残ったのは
口の中の大量な水分。

飲みきれん…

「はぁ… 少し貰ってあげるわよ」

遠慮したいが喋れないためラウンド2へ。
















「おやすみキョン♪」

「あ… あぁ… おやすみ…」

気力が全てハルヒに吸われた気がする…

眠いな…

「ん?」

後ろからは春奈に抱き付かれ、
前からはハルヒに。

幸せだなぁ…

















===============


「パパー!」

「んぁ?」

部屋は明るくなりカーテンのピンク色が部屋に写る。
俺の上で春奈が四つん這いで、その横にハルヒ。

「おっはよ、キョン♪」

「ハルヒか、仕返しって言葉知ってるか?」

「へ?」

そのままハルヒの顔に急接近してキスをした。
子供の前だが言い訳なら考えてある。

「春奈。 家族はな、朝のちゅーってのが出来るんだぜ?」

「朝のちゅう?」

何故か顔が真っ赤なハルヒが完全停止した。
目が震えたまま動かない。

「ママにやってみろ」

「わかったー」

ハルヒx春奈。
結構いい絵になりそうだ。

「出来たー」

「よし、いい子だ」

春奈の頭を撫でながらハルヒの再起動を待った。

「あ…」

目を開け閉めしながら周りを見渡してやがる。
記憶が飛んだのか?

「ママ。 さっきね私がちゅぅしてあげたのよ?」

「春奈が? ありがとっ」

「えへへ」

ほぅ、褒められると照れるのか。
しかもかなり可愛い…
よし、参考にしよう。

「春奈、新聞持ってきてくれない?」

「うん」

ベットの上での会話なのだが。
なんとなく嫌な予感がした。


バタン。

春奈が部屋から出ていってしまった。

「ふ〜ん、朝のちゅーねぇ?」

「あれは… 教育だ」

「大人の教育してあげようか?」

「待てい」

「春奈が来るまでお勉強よ! 観念しなさい!」

「ちょいまて! ぬぁぁああ!!!」



















春奈が戻ってきたのは30分後。
それまで俺はハルヒに大人のお勉強を受けていた。

春奈に聞いたところ。

『テレビ見てたの〜』

と。

その可愛い無邪気な笑顔を見てしまったので怒ることも出来なかった。
怒る理由もないがな。

「キョン、授業料はタダだから心配いらないわよ」

そんな心配はしていない。

机に座る俺の前におかれた朝食。

オムレツにはケチャップで
“大好き“ と。

春奈のやつにはハートのマークが描かれていた。

「食べさせてあげよっか?」

「別にいい」

「もう…。 春奈、あーんして」

「あ〜ん」


幸せな家族を見てると思う。



断るんじゃなかった…!!


「おいしい?」

口をもぐもぐしながら春奈が

「うん」 と。

「ハルヒー、箸が持てない」

ふざけた男ですが気にしないでください。
ただいま俺は孤独を覚えてしまったんだ。

「パパ、私が食べさせてあげる」

さすがハルヒの子、と言いたい程に上手く箸を使いオムレツを俺の口まで運んでくれる。

「んん、おいしいぞ春奈」

「パパもやってー」

「おぅ」

春奈の口に小さく切ったオムレツを入れて横目でハルヒを見てみた。
そこにはムスッとしたハルヒの顔が写った。

「ほら、ハルヒも口開けろ」

「え?」

皿の上の大好きと描かれたオムレツを箸で切りハルヒの口の前まで運ぶが。

「いいわよ別に」

「じゃぁ春奈ー、あーんしてみ」

「うん、あ〜ん」


再び同じ事をして再び横目でハルヒを伺う。

更にムスッとした顔が出来ており、「むぅー」って声が聞こえる。

てか春奈のもぐもぐする顔がものすんごく可愛いんですけど…
残念ながらデジカメは故障していて写真に納めることが出来ない…

「もう一回だけ聞いてやるから。 あーんしてみ」

「うぅ… ん、あーん…」

「ママとパパみたいな人たちってらぶらぶっていうの?」

予想外な娘の発言に春奈を凝視したまま俺もハルヒも硬直してしまった。

「私パパみたいな人と結婚したいなー」

安心しろ春奈。
もし男が出来たりしたら俺がドロップキックくらわしてやるから。

「まぁ… そうかな…? ほらハルヒ」

硬直したハルヒの口にオムレツを入場させてやり俺は一息ついた。

「ラブラブって言うのはね、手繋いでちゅーしてたりしたら言うのよ」

「へ〜」

子供に教えるべきなのかわからない知識をハルヒは春奈の脳にいれてしまった。

「久々に遊びに行くか」

「本当!?」

輝く春奈の目。
ハルヒも興味津津な顔でご飯を口に入れている。

「遊園地がいいか?」

「うん!!」

「まぁたまにはいいわねー」







こうして、遊園地に行くことになってしまった。
楽しければいいんだ。

春奈もよろこんでくれているようだしな。