ハルヒの家に住み着いて、早二週間程経過した。
現在進行形でラブラブな俺とハルヒ。 しかも毎夜、ラブラブ度は上がる。
そりゃそうだ、年頃の男女が一つ屋根の下で誰にも文句を言われずに好きな事が出来るのだからな。
週一かニぐらいは休憩をとっているつもりなのだが。
はっきりいってかなり疲れてきた。
確かに、ハルヒと一緒になれるし嬉しいのだが。
それを行う事によって就寝時間は大幅に削れる。
それの対処として真っ昼間から始めたり時間作戦に出たが、そんな時間に始めたらなかな
か終わらない。
結局、夜遅くまでやっている。

しかも、更に怖いことが起こる事になる。

「キョン、今日は昼からがいいなぁ」

ハルヒが病み付きになってしまった。
これは物凄く大変な事態なんだよ…
週一かニは休憩しようと言っているのにハルヒは。
『嫌っ』
などとわがままを言う。それに負ける俺も悪いのだがな…
もう俺の体もヘロヘロなわけで、目の下にクマが出来ている。
ハルヒは一応俺の心配もしてくれるのだが…

『最近疲れてるの…? 今日は早めに終わりましょう』と。

結局やる、ということが強制的に決まっており、やり出したら止まらない、これも真実だ。
そうだろ? 俺だけじゃないはずだ。




そんな中、休日のお昼。
大学の卒業が決まり、そろそろ就職もする時だ。

「キョンはどっちが好き?」

ハルヒの両手にぶら下がるのは懐かしき北高の女性用の制服と、これまた懐かしいバニーガールの衣装。
どっちがいいってなにがだ?
「これ着ながら…」

顔を少し赤らめるハルヒ。

やばい。

三つ以上の意味でやばい。

一番危険信号を出すのは。
体力面。



「ハル…」

フラッと目眩がしてソファーに倒れこんだ。
あぁ、もうダメだ。

「えっ!?キョン!ど……たの!?」

掠れたハルヒの声しか聞こえない。
目眩って結構キツイんだな…
体の自由がきかねぇや…

「…ン! し……よ!」


今日は無理です…







































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「あっ、キョン…」

眩しく… ない…
外真っ暗じゃないか。

「ごめんねキョン… そんなに疲れてたなんて思ってなかった… 無理言っちゃってごめんなさい…」

見上げればハルヒの顔。
この感じ、膝枕か。

「ごめんなさい…」

ポタポタと上から垂れてくる聖水。 俺にとっちゃな。
カメラほしいね… こんな表情でも可愛い…

「早く… キョンとぉ… 一緒になりたかったからぁ… えっぐぅ…」

どうやら本当に心配してくれているようだ。

「さっき… キョンが倒れた時ぃ… えっぐぅ… また… ぅぅ… いなくなっちゃうと…
えっぐぅ… 思って… えっぐぅ…」

「ハルヒ…」


俺は幸せ者だよ。
こんな美少女と毎日を過ごし、こんなに心配してもらえる。
毎日が楽しい日々で。
一秒にわくわくして。
ハルヒと一緒にいられる時間に感謝していた。


「だから… もういい… えっぐぅ… ぇっちな事なんて… いいからぁ… えっぐぅ… ずっ
と一緒にいてよぉ… ぁぁぁん…」

この言葉を言い放ち、俺の胸の中で泣き始めたハルヒ。
よーく考えれば。
同じ時間分しか寝ていないハルヒだって疲れているはずだ。
それなのに俺と一緒になりたいと願っていた。
女性より先に弱音を吐いた俺。
ハルヒは別格かもしれないが男のポリシーに反するよな。

「ほら、泣くなよハルヒ。 もう俺もこの通り元気だ」

しかし

「そぉやってキョンが… えっぐぅ… 優しくするから逆にぃ… 不安に… えっぐぅ… なるのよぉ…」

逆効果らしく更にハルヒは泣き始めてしまった。
なんで優しくしたら不安になるんだ…

「キョンがぁ… 無理してるんじゃぁ… えっぐぅ… ないのかってぇ…」

そういう事か…
別に今の俺は疲れてを忘れたかのように元気だ。
なんて嘘で。 実際、まだ疲労が溜まっている。

「きょぉん… きょん…!」

ゆっくりとハルヒの頭を撫でてやった。

「わたしがぁ… えっぐぅ… バカだからぁ… キョンがぁ… 疲れてるなんてぇ… えっ
ぐぅ… 気付かなかったぁ…」

ハルヒがバカならば俺は大バカだ…

「ごめんなさい… きょぉん… ごめんなさい…」

そのまま延々とハルヒは俺に謝罪していた。
途中で何度も止めてくれと頼んだがハルヒは止めなかった。




数十分してからハルヒはいつの間にか寝息をたてていた。
「可愛いやつめ…」

すごく幸せそうな寝顔。
愛しいな。 最高だよ。

「…幸せだから」

可愛い寝言だな。 幸せか。
俺もだ。


俺の膝の上にある横を向いたハルヒの頭が回り、俺の方を向いた。

「きょん…」
寝言だよな?

「ハルヒ、彼氏が俺でよかったか?」





当然返事は帰ってこずにハルヒは寝息をたてていた。

「大好きだからな、愛してるよ、ハルヒ」

本当は何か返事してほしいが無理は言えない。
俺だってずっと眠ってたんだ、次はハルヒの番だ。
ゆっくり休め。 ずっと待っててやる。

ハルヒの顔が少しだけ頷いたような気がした。
気のせいかな…

「本当は無理してんのは、ハルヒの方じゃないのか?」
「繋がりが切れるのが怖いんじゃないのか?」
「一秒が…不安じゃないのか…?」

ハルヒの瞑った瞼の間から光るものが流れ始めた。

「ハルヒ…」

起きてるかなんてしらない。
俺が疲れているなんてしらない。

ただ静かに、ハルヒの口を塞いだ。





























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「んっ」

息が… 呼吸が… 出来ん…!

目をゆっくりと開いてみると、そこにはドアップされたハルヒの顔。

「んー! んんー!」

ハルヒはやっと俺が起きている事に気付いたらしくすぐさまに離れた。

「はぁ… はぁー…」

酸欠… 誰か酸素をくれ…

「んんっー!!」

更に第二ラウンドファイト。
呼吸もロクにしていないまま、インターバル終了…

K‐1選手でもこれはキツイ。

「んんんー!!」

もがく俺に対して、ハルヒは静かにしていた。


「ぶっはぁ… ゲホゲホ…」

第二ラウンド終了。
勝者は言うまでもなくハルヒ。

「なに… するんだよ…」

ハルヒの顔がとても明るくて優しい笑顔だった。

「夢の中でね、キョンがわたしを泣かせたのよ」
そりゃ酷い話だな。 なんかそんな事もあった気が…

「なんか本当は繋がりが切れるのが怖いとかなんとか」

それは忘れた、知らない、まったく身に覚えがない。
いや、だから知らないって。嘘?知らないって。

「でもね… 本当はそうなのかもしれないの… キョンがまた急にいなくなるのが怖い
…」

明るい笑顔が不安そうな顔に変わった。

「でも、キョンは言ってくれたの… 『お前は俺が守ってやる、一生傍にいてやる』っ
て」

言いました。 実はあの後言いました。
まさか夢で聞いていたなんて…

「それが… 嬉しくて嬉しくて… わたしはキョンに頼れる、一人じゃない、って改めて思ったわ」

無言のまま話を聞いてやった。

「だから決めたの」

「何をだ?」

つい喋ってしまった…

「キョンが傍にいてくれるなら、わたしは代わりにキョンに出来る事を全てやろうって」

代わりなんていらない。
俺はただハルヒが横にいるだけでいいんだ。

「だから… キョンの顔みたら… なんか安心しちゃって…」

で、さっきにいたるわけか。

「そぅ…」

俯くハルヒは、どこか元気が無さそうだった。

「…」

「怒ってる…?」

俺の顔を横目でチラチラ伺うハルヒ。


「怒ってないぜ? むしろ嬉しい」

「キョン…」

ベットの上だというのに飛び付いてきたハルヒ。
確かに床よりは安全性が… じゃなくて。

「キョン」

「ん?」

「…大好き」