涼宮ハルヒの幸福2-5



「ねね、キョン」
「ん?」


朝。
ものすごい眩しい光が窓から差し込む中、布団の中にまだこもっていた。

「キョン?」
「なんだ?」


あんまし出る気になれない。
出るとハルヒの姿を見てしまうからである。

「キョン!」

何を言おうが出ないからな。
次は俺のネジが吹っ飛ぶ…

「あー、うっとおしいわね!」

布団をバサッとめくりあげられた。
やめろ! やめろおおお!!


「何照れてんのよ」

照れとかそういう問題じゃない!
精神のHPがやばいんだ!

とりあえず俯せになろう…


「何やってんのよ!」

回避ですよ。

「ハルヒ! やめてくれ!」

ハルヒは俺の上に座りだした。

「ん〜 なかなかしぶといわね」

誰かハルヒの頭のネジを探してくれ!

「頼むからやめてくれぇ!」
「やーよ」

こいつは何が目的で俺を殺そうとしているんだ!?
まじで昇天3秒前!

「きゃぁぁあ!?」

力ずくでハルヒを押し、全力で部屋から退却した。

よかった… なんとか見ずに済んだ…


時はハルヒの誕生日の次の日。
いい天気という情報しか手に入れてないまま一戦を終えた。
いそいで着替えよう。








「ハルヒー、着替えたかー?」
扉越しに言ってみる。

「いいわよー」

よっし。

ガチャッ

バタンッ


「って…」

不意をつかれた…
ハルヒの服装は

「なんでそんな薄いやつ着てんだよ…」

昨夜のとは違う服装。

「別にいいじゃない」
「いいが… 家から出る時困らないか?」

するとハルヒは鼻で笑い。
「こんな姿で外でるわけないじゃない! 恥よ恥!」

となると家の中だけか。
「朝ご飯作ってあげるから、ゆっくりしてて」









お言葉通りにゆっくりする俺。
本当の夫婦みたいな感じだな…

まぁいづれかそうなるのだがな。
今のうちに慣れるのも悪くない。

それよりこのシーツ汚いなオイ…
洗濯機突っ込まないとな。













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時は吹っ飛びあれから三日後。


「少しお時間よろしいですか?」

神人か? 閉鎖空間か?

「いえいえ、違いますよ」
「じゃぁなんだ」

後ろにいるハルヒは不思議そうな顔で会話にいつのまにか入っていた。
「何の話?」

お前の話 、と即座に答えると頃だった…

「涼宮さんは少し休憩でもしていてください、少し大事な話をしなければなりませんの
で」

「そっ、わかったわ」

以外にもハルヒは簡単に去ろうとしていた、が。

「キョン! わたしがいない間に浮気でもしたら許さないからね!」
と言い放ってから視界から見えなくなった。

「さっそくですが本題です」
「あぁ」

「以前に涼宮さんの能力が強まっている、と話した事がありましたよね?」
「そんな事言ってたな」
別に強くなろうが弱くなろうが俺には関係ない。
機関の皆様にお願いするさ。

「その能力が限界を超えました」
「限界?」

ハルヒに限界という言葉があるなんて知らなかった。

「で、それがどうしたんだ」
「涼宮さんは限界を超えてもどんどんと力を蓄えています」
「限界じゃないのか?」
「わかりやすく言うと、コップが涼宮さんで水がその力としましょう」

古泉の例え話か…
わかりやすく頼む。

「蛇口を捻りそこから水が次々に流れていきます。それをコップに入れる」
「で、なんだ?」
「そのまま放置するとどうなりますか?」

小学生並みの問題じゃないか。

「溢れるんじゃないか?」
「正解です。 ではその溢れた水はどこに行くと思いますか?」

溢れた水は下水道へ。
溢れた力はゴミ箱へ。

「違いますよ。 次に水の入る器はあなたです」

器…ね…
何気にわかりやすい説明に感謝しよう。

「ってことは、ハルヒにある能力が俺にもあるって事か?」
「まだ力は弱いですが涼宮さんと同じ能力をあなたはお持ちになってますよ」

いつの間にそんな事が…
となると俺の心境で閉鎖空間が出るのか?

「出ますね。 あなたの事だから無いと思いますが」

いや、わからんぞ?
俺が世界が消滅してほしいと願えば終わるんだぜ?

「そんな事したら涼宮さんまで消えてしまいますよ?」
「まぁそんな事しないがな。 で俺はどうすればいいんだ?」

「あなたの力が強くなり次第、涼宮さんの能力を消したいと願ってくれませんか?」

能力を消す能力。
俺としてもハルヒからその力は引き剥がしたいとおもっている。
あんな危ない状況をいくつも潜った俺が言うんだ。

「俺の能力はどうなるんだ?」
「そのまま、でしょうね」

俺は保留所か?

「機関からも依頼として着ていますよ?」
「まじか…」

「もう一つ方法はあります」
「ん?」

その方法に全て賭けてやる。
俺にそんな事が出来る自信は無いしな。

「涼宮さんに直接頼む事です」
「ハルヒに?」


もしハルヒにそんな能力がある、なんて言ったらあいつは大喜びだろうな。
けど成功する確率は低い。
今までのハルヒからしてあいつは喜んで力をバンバンと使うだろうし…
知らない間に地球上にエイリアンが大量発生しているかもしれない。

「今のあなたでも涼宮さんには信じて貰えませんか?」

無理だろうな…
あんな好奇心旺盛なやつだ、もしかしたら俺の存在が消されるかもしれない。

「どういう意味ですか?」
「プライバシーだ」

古泉はいつもの表情で。

「全てあなたに任せます、どう判断しようが僕は援護しますから」
「援護…ね…」

「こらーー! キョン! いい加減にしないと浮気しちゃうわよー!」
「出来るもんならやってみな」

ベンチに座ってジュースを飲んでいたハルヒが立ち上がった。

「それでは、僕は失礼します」
「あぁ」
「いずれか終わる世界です、あなたに全てを委ねました」

その一言を残し古泉は帰っていった。

「あんたも馬鹿ね」
「うわっ」

いつの間にか俺の背後に立つハルヒ。
馬鹿いうな…

「浮気するぐらいなら死んだ方がましよ」
「俺が浮気したら?」

ハルヒはニヤリと笑い
「その相手を殺してからわたしも死ぬわ」

予想外。
「俺は殺さないのか?」

「殺せないわよ、あんたには幸せになってほしいし」

俺はハルヒの手を取った。
そのまま力強く握り帰路を歩き始めた。

「幸せになろうな」

「なんか言った?」

「何も言ってない」

「ちゃんと聞こえてたわよ」
「なっ…」

聞こえてるなら始めから言えよ…

「絶対に幸せになるんだからね! わたしを悲しませたら浮気するから!」
「したら自殺するからな」
「もう、バカね」

そう言い放ちハルヒは帰宅途中の学生が沢山いるのに口付けをしてきた…

「帰るわよ!」

俺の手を引くハルヒはもちろん、顔が赤かった。


「ったく、あんな事言われたらキスしたくなるじゃない…」
ハルヒの表情は見れないがどこか嬉しそうな感じが出ていた。

「俺と宇宙人の類ならどっちが大切だ?」

「宇宙人!」

なんてやつだ…
かなりショックだぜ、オイ…


振り向いたハルヒは頭上に?を出しながら
「嘘よ、嘘。 あんたの方が何万倍も大切だから安心しなさい」

「じゃぁ俺はこっちだから」

分かれ道。


「んな事知らないわよ、来なさい!」

強制的にハルヒの家方面に拉致された。


「寂しいか? 泊まってほしいか?」
やべっ。 顔のニヤケがとまんねぇ!

「何ニヤニヤしてんのよエロキョン」
ニヤニヤしていたが別にそんな想像はしていない。

「別に今日は寂しくないからいいわよ」
嘘つけっ。 顔に書いてあるぜ?

「本当に今日はいいから、ご飯だけ奢って」

なぜ奢らなければならない…
「彼氏でしょ? 彼女を悲しませるような事をしていいの?」
「理論がわからん…」
「あんたはなんでも科学的に解こうとするからいけないのよ、右脳を使いなさいよ」

俺の手を握り二歩程先を歩くハルヒは振り向かずに歩いていた。

変わっちゃいない。
高校時代から部活内のこの上下関係。

「もう少し…」

何かをハルヒが呟いた。
はっきりと聞こえず語尾がうっすら聞こえた。

「何か言ったか?」
「え? あ、いや、なんでもないわよ」

俺の手を掴むハルヒの手の力が増した。
何を考えていたのか知らないが、少し不安そうなハルヒの後ろ姿が見えた。







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その後、俺の奢りで両者腹を満たした後、別々の帰り道を歩いた。

なんともないはずの平日。
少しだけ違和感を感じた。

ほんの少しだけ。