涼宮ハルヒの幸福2-3
またもや危なっかしい足取りで…
「大丈夫か?
手伝うぞ?」
いや、真剣に手伝わないといけない気がしてきた…
「おっとっと、いいわよ別に」
見てるだけでこちらが焦る…
そんなこんなで机にズラズラと料理が並んだ。
ううむ…
かなり旨そうだ。
「それじゃぁいただきまーすっ!」
ハルヒの高らかな声がかかり俺の食欲がやっと満たされるかと思ったが。
「箸は?」
基本的な事だ。
「へ?
イタリアンなんだからフォークとナイフ使いなさいよ」
確かにみた感じ9割がイタリアンっぽい。
だが俺は箸派なんだが…
イタリアンの店に行ってもナイフとフォークしかないから結構
困るんだな…
まぁ別に使うことはできるが。
まず使わなくていいものから手に取る。
「もーらいっ」
俺が手に取って口に入れようとしたピザが隣に座るハルヒによって食された。
口をもぐもぐさせるハルヒ。
「卑怯だな…」
「今日のメインはわたしよ?
あ〜ん」
あ〜ん って…
とりあえずハルヒによって体の半分を失ったピザをハルヒの口に入れてやった。
「もぐもぐ…
ん、次キョンの番!」
「え、別にやらんでもいいぞ?」
「だめよ、ほら!」
「あーん」
俺の口に含まれたピザ。更にその数秒後に俺の唇に触れた柔らかい感触。
よく考えてみたら…
他にも人がいますよ…
朝比奈さんは顔を赤くし。
古泉はいつもの笑顔で。
長門は興味無さそうにハルヒの手料理を口に運んでいた。
しかし長門の視線を感じる気がしたのだが…
気のせいかな?
「いきなりかよチクショウ…」
「だってキョンは人前だと絶対にやらないもん」
優しい笑顔のハルヒ。
本当にこの瞬間だけでも1年間の幸せを感じる笑顔だった。
なりふり構わず抱き締めたかったが俺の理性が生きているうちは暴走はしないだろうな。
更にパチッとウィンクをするハルヒ。
前までの俺なら即死なウィンク…
今はある程度なら制御も可能だからな、なめんなよ?
「ほら、キョン、あ〜ん」
その後も甘えるハルヒに流されるまま食事を終えた俺。
幸せなんだよなこういうの。
人生いつ終わるかわからないが。
この幸せがいつまでも続いてほしい。
そう願う限りだった。
「ねぇ、キョン」
「ん?」
この話は食事が終わり俺とハルヒ以外の人たちが帰った後の事になる。
「帰らなくていいの?」
何をいうかと思えばそんな事か。
「帰ったほうがいいか?」
するとハルヒは立上がり。
「あんた、プレゼントもまだ渡してないのに帰るの!?」
あぁ…
忘れてたよ…
なんかさっきまでかなり騒いでいたから今日がハルヒの誕生日だって事を忘れていた。
なんて口が裂けても言えない。
実際口が裂けたら叫び声だけだろうがな。
「キョンキョン」
頭の中で必死に言い訳を考えていた俺を正気に戻した名詞。
「プレゼントは何?」
なんだっけ?
と二秒ぐらい考えていた。
しかし壁にもたれかかっている袋を見て思い出した。
「んっとな、ハルヒは何が喜ぶかなーって思って買ったんだが…」
とりあえず袋を引き寄せた。
ずっしりと重い袋。
いったい何が入っているのかと思わせる程の重さ。
「キョンのプレゼントならなんでも嬉しいわよ?」
嬉しい事を言ってくれるじゃないか。
袋から一つ一つインテリグッツを取り出して床に並べた。
ハルヒは興味を示したらしく一つ手に取りまぢまぢ見て、また違うやつを取り同じ事を繰り返す。
「どうですかハルヒ様?
お気にめされましたか?」
そんな俺の言葉も虚しくハルヒは黙々とインテリグッツをあさっていた。
「ハルヒ?」
自分の世界に入ったようだ。
完全に空間が遮断されている気がする・・・ なんだこの透明な壁・・・
最後の一つを袋から取り出し床に置いたところで俺は一休み。
何個買ったんだよ俺・・・ えっと、いーちーにーさーん・・・
「キョン!」
ビクゥッとする俺。
しょうがないだろ、空間移動して目の前にいきなり人間が現れるのと同じだ。
なんせ空間が違ったしな。
「なんだ?」
「これ全部貰っていいの?」
そうじゃないのなら、なんのために俺はこんなクソ重い袋を持ってこの家にきたのか・・・
「全てプレゼントだ」
するとさっきまで完全無口なやつの顔が一転して。
「ありがとう」
と、写真に収めたい程の笑顔で。
無論、携帯を常時片手に握ってるわけではないのだから撮れるはずもなく悔やんでいた。
当たり前だろ、それ以外に携帯のカメラの使い道はないだろう?
あー、くそぅ、時間よーもどれーー!!
「撮影会がしたいの?」
否定は出来ない。
しかしただの変態では無いんだ。 頭の働くちょい変態なのだよ俺は。
「コスプレ?」
なぜコスプレを出してきたのかは不明。
俺の脳細胞が例えば牛ぐらいの大きさならハルヒの脳細胞は銀河並みの大きさだしな・・・
俺にはこいつの考えてることは予測不可能なんだ。
「別にわたしはいいけど? キョンがしたいのなら」
今日はもう遅いし止めておこう。
時刻はすでにPM10;00を回りきったところだ。
そろそろ俺も自宅に戻る頃だな。
「よっこらせ」
親父みたいな台詞を吐きその場に立った。
なんか長時間座ってたから腰がギシギシと鳴ったぞ・・・ 大丈夫か?
ハルヒを見下ろしてみると以外にもブルーな顔がそこにはあった。
「帰る・・・?」
上目遣いのハルヒの目には少し潤みが見えた。
はっきり言ってこの顔は結構キタ・・・ なにか可愛いぬいぐるみを手にした幼い女の子の気持ちがわかる気がする・・・
更にその顔にはどうやら魔法があるらしく俺の足が完全に停止した。
両者目が合ったまま微動だにしない状態。
ハルヒの『帰る・・・?』にはどのような意味がこめられていて発言したのか。
しかしこの顔から察するに帰らないでほしいという気持ちなのだろう。
俺だってハルヒと一緒にいられない時間は寂しい。
しかしハルヒは両親とも仕事が忙しくなかなか帰ってこない状況。
俺以上に寂しいに決まっている。
ようするにハルヒは。
寂しがりやなのだ。
「キョン?」
先に口を開いたのはハルヒ。
あのまま数十秒お互い動かなかった。
俺は完全に思考回路が停止して何も考えていないまま突っ立っていた。
「ぁー、ハルヒさん? 今日は誕生日だから後一つだけ願いを叶えてあげますよ?」
するとハルヒは
「その願いはなんでもいいの?」
と、俺をどこかニヤけさせる笑顔で。 だから変態じゃないって。
「なんでもいいが?」
「絶対?」
「あぁ」
ハルヒがお願いすることは決まっている。
いくら銀河だろうが宇宙にとってはごく小さなものだ。
俺の牛だって一瞬ぐらい宇宙並みの大きさに膨らむのだよ。
「じゃぁそのお願いを後三つにして?」
俺の牛が破裂してハルヒの銀河が宇宙に昇格したようだ。
大体お願いを増やすなんてありか?
ランプの魔人が出てきてお願いを三つ叶えてやるといわれ二つを欲望でみたしたあと最後の願いを
『その願いの数を増やしてくれ』
で、これがかなうならば世界を自分の物にできそうな勢いなのだが・・・
こんなのありか?
いや・・・ わかってるんだ。 相手はハルヒなんだ。
何を考えてるかなんて破裂した牛並みの俺じゃ到底わからんだろう。
しかしそのハルヒの顔はどこか無茶は承知と言っているような気がするのだが・・・
まずその三つの願いを何に使うのかがわからん・・・
「今日だけだぞ?」
優しいランプの魔人だっているのだよ。
ハルヒの顔がパァーッと明るくなり
「うん」
と一言。
「で、一つ目はなんだ?」
俺の手はグラビティー+ハルヒの引力(?)により引っ張られてしまい俺の体もつられて座った。
そしてハルヒの顔がバッと俺の顔に近づき残り数センチで0距離になるところまで迫ってきた。
「一つ目、今日泊まってくれない?」
やはりそうきたか、だが準備は万端だ。
「理由は?」
意地悪な魔人なのだよ、俺は。
「え・・・ 理由・・・?」
そう理由、reasonだ。
困るハルヒは俺の顔から距離をどんどんと離していきもとの場所まで戻り考え始めた。
正直に言おうぜ、『寂しいの』ってな。
場合によっては俺が壊れる可能性もあるがな・・・
「き、キョンがわたしと一緒にいたいような顔してたから・・・」
その言葉、名詞だけ変えたそのまま返してやるよ。
「他には?」
「他・・・ べ、べつにいいじゃない!」
「だーめーだ」
意地悪度がドンドンと高くなっていくな。
「わ、わかったわよ・・・ そのかわり絶対願いは叶えてよ?」
「おう」
さぁ見せてもらおうか、宇宙の力とやらを。
「さ、寂しいからよ・・・」
イマイチ。
「イマイチって何よ! あんたは何に期待してるわけ!?」
顔を真っ赤にするハルヒ。 そんな恥かしい事でもない気がするが・・・
「う、うう、うるさい!」
「あぁ・・・ 見たかったなー・・・」
ハルヒは握りこぶしをほどいて
「何をよ?」
ここで俺の意地悪度がMAXに達した。
「ハルヒの可愛い顔が」
そして意地悪かどうかと考える俺がいた。
褒め言葉だな。
「なっ・・・」
ハルヒは俺の胸倉を掴んでいたがそれを離し。
「可愛い顔・・・? 誰の・・・?」
一人しかいないだろうが。
「あんたが?」
俺が
「わたしの?」
ハルヒの
「そう・・・ね・・・ じゃぁ二つ目のお願いを使うわ」
「ん?」
ここで二つ目か。 ペースが速いな。
そういえば絶対に俺は叶えないといけないんだよな・・・
「子供つくらない・・・?」
宇宙は計り知れなかった。
「何言ってんだよ・・・」
「子供よ!」
以外にもハルヒは平然な顔をしていた。
「お前なぁ・・・ 大学も卒業してないのに普通そんな事言い出すか?」
「普通じゃないなら言うわよ」
「やめとこう」
当たり前のようにここでハルヒが妊娠なんてしてしまえば間違えなくハルヒは休学。
そして俺も一家の柱として働き始めねばならなくなるのだが。
結婚もしてないっつうのに・・・
「絶対叶えてくれるんでしょ!?」
「限度がある」
ランプの魔人だって言っただろう?
人を生き返らせたりは出来ないと。
魔人にだって限界があるんだよ。 そうだよな、青いの。
「なんでよ、いいじゃない!」
怒鳴り口調になったハルヒ。
さっきまでの不安そうな顔はどこかに消えうせたようだ。
「せめて大学を卒業してからな」
「いやよ! わたしは早くキョンとの完全な繋がりが欲しいのに・・・」
俺だって欲しい。
急に離れたりしないようにな。
「なぁハルヒ」
「・・・」
なんでもと言った俺が悪いのだが、もう叶えてやりたい気持ちでいっぱいだ。
だが早すぎる・・・ だから・・・
「その・・・ なんだ・・・ 練習・・・ なら・・・ いいんじゃないか?」
完全な変態決定。
「え・・・?」
「だから練習・・・」
男ならこの”練習”にあたるものに興味のないやつなどいない。
もうなんとでも言ってくれよ・・・
「う、ぅん・・・」
恥かしそうに言うハルヒ。
もちろん言いだしっぺの俺が一番恥かしいのだが・・・
もちろんまだ子供はつくらん、練習だ練習!
「じ、じゃぁ・・・ 三つ目」
ペースが速すぎる・・・ もう最後の願いか・・・
「後願いを数万個に増やして」
永遠に終わらないのではないだろうか? エンドレス リクエスト・・・
「今日限りだからな・・・」
そうしなければ完全に振り回される彼氏になってしまう。
そしてハルヒは大きく酸素を吸い込み。
「大学卒業したらすぐに結婚! 結婚したらすぐに子供を作ること! 絶対に女の子の元を出すこと!
女の子の名前はわたしに任せて!」
元って・・・オィ・・・
「名前?」
「もう決めてるの!」
まぁいいけど・・・
「次のお願いはー」
そういえば未来を創造する願いなんてありか?
せこいな、一生を計画されてるじゃないか・・・
「一緒にお風呂はいろ?」
そのハルヒの顔に負けてしまい俺はグッとハルヒを抱きしめてしまった。