涼宮ハルヒの幸福2-2

そう、本日はハルヒの誕生日。

「何か欲しいもんでもあるか?」
「買ってくれるの?」
「まぁ一応な」

財布の方にはこの日のためにたんまり用意してあるからな。
少しずつ貯めたかいがあったよ、まったく。

「あ、わたしたちも何かプレゼントを」
「僕もふんぱつしましょうか」
「…」

宇宙人関係一同のプレゼント。
宇宙らしく月の石でも持ってこればハルヒは喜ぶと思うぞ?

「可能ですが彼女が信じる可能性が低いですね…」
可能なのかよ… 俺に一つくれよ。
「誕生日プレゼントに、ですか?」
いや… 誕生日プレゼントが石ってのは何気に悲しいだろ…
いくら月の石だろうがな…

「じゃぁ皆! わたしが喜びそうな物を頂戴!」

ううむ… 何がいいかな…
ハルヒが喜びそうな物…

「明日は学校休みだし今夜6時にわたしの家集合ね! パーティーやるから!」
「何か他にいるものあるか?」
「無いわよ、料理するから楽しみにしてなさい」
ほぅ、それは楽しみだな。
2ヵ月とちょっとの間、ハルヒの手料理は無しだったからな。

「じゃぁ解散っ!」












はてさて、何をプレゼントするべきか。
ハルヒが喜ぶ物…
花とかはベタか? だよなぁ…
一人でぐるぐるとデパートの中を回り目についた一軒の店。

「インテリか」

外から見た感じ、結構見た目はいい店だ。
まぁハルヒも喜ぶだろうな、きっと。

「いらっしゃいませー」


ううむ…
はっきり言おう。


俺のために買いたい。

そんなものがズラズラ並んでいた。
見るだけで人を楽しませる商品だな。

財布の中には諭吉が5枚…
相当入っているのだが、どうするかな。
別にハルヒのためなら3枚ぐらいなら消費してもいいとおもっているがな。
海外に行って小遣いとしてもらった金。
ぶっちゃけ観光なんて俺は、まったくしていないため土産すら買っていない。
海外まで手術しに行けたのは古泉が入っている“機関“のおかげなんだがな。
かなり援助してもらった、その余りがこの諭吉だ。
機関には悪いがハルヒの誕生日プレゼントならいいだろ?
手に持っていたかごの中には考えられない程にインテリグッツが入っていた。
うはぁ… 無意識って怖いな…

まぁいいけどな。


レジにかごを渡し財布を開き準備する。
諭吉、お前は役にたった、素晴らしい働きだ。

「39800円になります」

予想外。 かなり予想外。

はたして普通の一般大学生は彼女のために4万近くを使うだろうか…?
さらば諭吉×4









正直言うと5000円ぐらいは俺のために使いました…
まぁいいだろ…?

携帯のディスプレイにはPM5;30と表示されている。
やばいな、地下鉄で間に合うだろうか…









しかし。



「遅いわよ!何やってたのよ!」

ハルヒの家に着いたのはPM6;20…

「すまん…」
「いいから早く上がりなさいよ!」
「あぁ、もう皆来てるか?」
ハルヒはフンッと鼻を鳴らしてから。
「当たり前よ! もうプレゼントだって貰ったんだからね?」

早いな… 普通は皆が揃うまで待つものじゃないのか…?

「その袋の中はもしかして?」
俺の両手にぶらさがる33000円+消費税の商品。
「あっ…」

何かに気付いた俺。
誕生日プレゼントなら…

「包装忘れた…」

しかしハルヒは笑いながら
「そんなのいいわよ、ただゴミになるだけじゃない」

確かに正論だな。
しかし包装というものはプレゼントが何か楽しみにする少しの間を稼ぐものであり、女性
はそういうのが好きなんじゃないのか?

「ややこしいのは嫌いよ」
いかにもハルヒらしいな。

しかし俺も33000円の単品の商品を買ったのでは無く、
33000円“分“の複数の商品を買ったわけでそれを全て包装するならば相当手間がかかる
ため助かったのだが…
なんかハルヒの残念そうな顔が気になるんだよな…

「すまんな、包装無しで」
「だからいいって言ってるじゃない」

ならばなぜそんな顔をするのだ?
俺にそんな顔をしないでくれ… はっきり言ってかなり辛い。

「にしてもすごい量ね…」
「ん? まぁな、33000円も使ったんだぜ?」
「さっ! 三万!?」

ハルヒはかなり驚いているようだ。
別に俺の金じゃないから心配するな、と言えばかなり冷めてしまう気がする。

「よくそんなに使ったわね…」
「大好きな彼女のためだからな」
ここで決め台詞を投入!

バッ と抱き付いてきたハルヒ。
両手が塞がっているため俺は何も出来ない…

「キョン… 大好き… でも… 気持ちだけで十分なのに…」
「ん? 気持ち+プレゼントの方が喜ぶだろ?」


ハルヒはいつの間にか俺に口付けをしていた。
自分でも気付いた頃にはハルヒは離れはじめていた。
それほど静かなキスだった。

「さっ、入りなさい。 いつまでも玄関に突っ立ってる人なんてよっぽどの暇人よ?」

ハルヒは笑顔だった。
先程の暗い顔とは比べ物にならないほどの明るい笑顔。









「おやおや」

第一声が挨拶じゃ無くてそれかよ…

「それなら、こんばんは」
今更かよ… 遅いだろうに…

「あ、ああ、熱々ですね」
朝比奈さん? それはどういう意味ですか…?
まさか…

「す、すすす、すいません!」
頭を深く下げる朝比奈さん。
いえ、別に謝ってくださいなんていってませんよ?
それよりも…

「古泉… まさか見てたか…?」

「ふふふふっ」

横でカァーッと顔が赤くなるハルヒ。顔大丈夫か?

「あれはハル、、、」
「あれはね! キョンが無理やりわたしにキスしたんだからね!?」
嘘はよくないですよハルヒさん。

「そ、そうなんですかぁ?」
真に受けないでください朝比奈さん。

「ハル、、、」
「キョンったら結構積極的だからね! しょうがないからキスしてあげたのよ!」

何も言わせてくれないハルヒ…

すると読書していた長門が
「…S」
と一言呟き本の世界へ戻っていった。

おい… Sって…
肯定も否定もできないがもちろんハルヒは…

「そうよ、キョンはSなのよ! しかもドがつく程の!」
どちらかと言えばハルヒの方がSっぽいが…

「え、えすなんですかぁ?」
頼むから止めてください…
朝比奈さん… あなたは変な発言はしないほうが…

「なんでもいいから腹が減った」
話題を変えねば…

「ん、キョン。 ご飯にする? お風呂にする? それとも…わた、、、」
「飯をよろしくっ」

よく聞く台詞だな。
『それとも…わたし?』
とでも言いたかったのだろうか?
もしかしたら俺はハルヒの言った時の仕草によっては『もちろんハルヒ』と言っていたか
もしれないがな。


「むぅー なによー」
頬を膨らませるハルヒ。
怒っている顔もなかなかかわいいぞ?


「鈍感キョンは忘れてパーティーにしましょう!」

鈍感な俺か…
そういえばプレゼント渡してなかったよな。

「ハルヒ、これ」
両手にぶらさがる袋×2を提示した。

「ん? 後でいいわよ」

後でいいのか・・・ 確か他の三人のプレゼントは貰ったと聞いたのだが・・・
とりあえず腹が減ったんだ、ハルヒの手料理を待つとしよう。





























「お待たせーー!!!」

大きな皿を持ちながらハルヒがキッチンから出てきた。
危ないな・・・

「手伝おうか?」

フラフラと歩くハルヒ、そりゃそうだ・・・ あんな上に掲げて持ってくるほうがおかしいのだからな。

「大丈夫よ、余裕よ余裕!」
まぁスポーツ万能だし体力的には問題は無さそうなのだが。
なんか気が済まないな・・・

「やっぱ手伝う」

ここからみる限りキッチンにはまだ何皿も残っているようだ。

「えぇぇえ! 待ってよキョン!」

何も聞かずにキッチンに歩いて向かった。
もちろん大きな皿を持っているハルヒは振り向くことすら出来ない状況のため軽く通過できたわけなのだが。
なぜハルヒがオレの手伝いを拒むのかがわからない。

「さてと」

どれから運ぼうかな・・・
何か順番などとかあるのだろうか?
別にいいだろう、適当だ適当。

「うぐっ・・・」

後ろから服を引っ張られて首が絞まるっ・・・

「待てって言ったでしょ!」
「ハルヒか」

なんで待たないといけないのか理由が知りたいのだが・・・

「それは・・・ あれよあれ!」

”あれ”というのは超高価な物から超下品な物までといくつもあるぞ?

「あれなの! キョンは戻って」

ハルヒは俺の背中を押しはじめた。
無論、俺が勝てる訳もなく台所に強制帰還。

「どうかしましたか?」

あぁ、どうかしました。

「僕でよければ相談に乗りますが?」
「結構っ」



はてさて、料理に毒が仕込まれているのかと疑う俺なのだがハルヒに限ってそれは無いだろうと断定したい。
最近のハルヒはなんだか俺に厳しいような厳しくないような感じがするのだが・・・
俺のこと嫌いか?ハルヒ。  俺は好きだぞ、お前のことが。




「次々ー!」

キッチンから再び料理の乗った皿が出てきた。