涼宮ハルヒの幸福15




あれから2ヶ月が経った。

わたしは一人で通学していた。

いいわよ、もう慣れたから。

でも… 寂しいけどね…

今まで一緒にいたやつが居ない。
どれだけ寂しい事かわかる?
もう毎日・・・ 胸が潰れそうなぐらい寂しいんだから・・・




























時は戻って二か月前。
キョンの手術中の最中で寝てしまった、わたし。

気付くと自分の部屋のベットの上で寝ていた。

急いでキョンの携帯に電話したんだけどつなからなかった。
その後、何回も何回も同じ事をしたけど、結果は同じだった。

家に行けばキョンがいると思ったけど…

何度チャイムを押しても誰も出て来なかった。
庭に入って周りをグルグルと回ってみたけど人の気配すら感じなかった。








今思えばキョンと出会ってからは全て夢なのかもしれない。






でもそんな訳が無かった。
高校の卒業文集を開いて見たところキョンの名は確かにあった。
わたしのアルバムにも何十枚もキョンの写真が残っていた。






いないわけが無かった。
わたしの心の中にも、しっかりとキョンと一緒にいた思い出が残っていた。












大学に行っても最近はちゃんと授業を受けれるようになってきた。
少し前までは友人が心配してわたしに付きっきりになるほどブルーだった。
そして友人は誰もキョンについて聞いてこなかった。
気を使ってくれてるのかもしれないわね。
それなら少しありがたいんだけど、それはそれで寂しい気もした・・・







つい最近、三日前ぐらいにまた告白された。
そいつが
『キョンはどうしたんだよ、捨てられたんじゃないか?』と
その時は本気で相手の頬をハタいた。

すぐに友人が駆け付けてくれて慰めてくれた。



誰に何を言われようとキョンをバカにしたりしたら許さない…

それにキョンとの約束も絶対に守る…

あんたも守らないと不公平じゃない… バカキョン…






でも今ではキョンに感謝してるからね…?

今のわたしがいれるのも、あなたのおかげ。

わたしといられた日々は幸せだったんでしょ?

わたしもよ? わたしは満足だからね、

まだ続けたかったけど、50年分ぐらいは幸せを感じたからね?

「涼宮さん、最近大丈夫…?」
「うん… 気にしなくていいよ」
「そう…? 何かあったら相談してよ?」
一番仲のよい優しい友達に支えられていたのが唯一の救いだった。
こんな言い方は悪いけど、彼の代わりにはなれない。
「ありがとうね」
「うん? いいよお礼なんて! 友達でしょ!?」
「そうね」
感謝してるわ…





あのね、キョン。

わたしは約束守らない人は彼氏として認めないからね?

手術の前に渡された封筒には手紙が入ってたのは覚えてるよね?

あなたは書いたよね?

『俺の最後が確認出来るまでは俺の事をずっと思っててくれ』って

約束はちゃんと守ってるからね?

夜だってあなたの事をずっと思ってるんだからね?

泣いちゃう時だってあるんだから…

まぁ…たまーにだけど…一人で…え、ぇっちな…事しちゃうけど…

あんたのせいだからね!?

でもキョン

わたしに愛されてる時点であんたは幸せ者なんだから!

それだけは神様に自慢してもいい事だからね?




帰り道。

授業だって全部聞けるわけ無いわよ。

あんたの事を思うと、頭の中はあなたの事しか無くなる。

あなたは約束したでしょ?
『returns absolutely』
絶対に戻る って。


絶対の意味わかってて使ったんでしょ?
何があっても守るんじゃないの?


「涼宮ハルヒ、話がある」

また男…

わたしはキョンと約束したのよ。

誰とも付き合わないって。

だから告白しても無理よ。







「俺と付き合ってくれ」

「いや…」









その男はビックリしたような顔でわたしを見ている。







「なんでだよ?」


「バカじゃないの!?」


わたしの前には、普通の宇宙人でも未来人でも超能力者でもない人が腕を組んで立っていた。




「あんた誰よ・・・」




「だれでもいいだろ? 付き合ってくれ」
真剣な顔だった。
そんな顔しても無理なものは無理。







「キョンには捨てられたんだろ? 俺が代わりになってやるよ」

「あんたに代わりができる? 出来るわけないじゃない」

「出来る。 キョン以上にお前を愛する自信があるからな」

「いい加減にしないと・・・ 殺すわよ・・・」

「なんだよ? 怒ってんのか?」

軽く頷いてやった。

「そうか・・・」












その男は続けてこう言った
















「それより先に言うことあったよな」

「そうよ・・・」









その男は大きく息を吸った。
こいつにならキョンをいくらバカにされようがわたしは怒らない。
自らに鞭を打ってるようなものだもん。












「久しぶりだな。 ハルヒ」


最愛の人が・・・ そこには立っていた。
夢よね、夢なのよね・・・

でも、わたしは・・・

これ以上に無い・・・・ 幸せを感じた・・・

「きょん・・・」