涼宮ハルヒの幸福10 12/23




決心した。 全て話そう。 ハルヒに。












「三つ目は何?」
そんな得になんともなさそうなハルヒの顔には少し心配の表情が見えた。

「とりあえず座ろう」
「別にいいわよ? すぐ終わるでしょ?」
「頼む・・・」

ハルヒの顔がみるみる心配の表情に変わっていった。
近くにベンチがあったので俺とハルヒは腰をかけた。

「いい天気だな・・・」
「そうね」

空は雲ひとつ無い晴天。

「で、最後の頼みは何?」
「あぁ、そうだったな・・・」
「そうよ、忘れてたとか無いわよね?」
「無い、ハルヒ、最後の話をする上で守ってほしいことがある」
「何?」
「最後まで聞いてくれ、途中から聞きたくなくなると思うが・・・」
「大丈夫よ、どんな話でも聞いてあげるから」

お前の精神力に賭けるからな。

「大学受験が終わった次の日に俺は病院行っただろ?」
「確か・・・ そうだっけ?」
「それでな病院でまたきてくれって言われたんだよ」
「それで?」
「ただ頭痛くてダルイだけでまた来てくれっておかしいだろ?」
「ただ確認とかしたかったんじゃないの?」
「まぁその確立もあるんだが・・・ でな、二日後にまた病院行ったんだよ
その時はもう体は全快していてもう普通だったんだでも一様行ってみた」
「お金の無駄じゃない・・・」
「そんな事はいいんだ、その病院で次に何があったか想像できるか?」
「確認でしょ?」
「違うんだ」
「え?」
「色々スキャンしたりしたんだ」
「スキャン?」
「体の中を映したり色々調べられたんだ」
「どうして?」
「でな、次に両親に来てもらってくださいって言われたんだ」
「なんで? 重い病気なの?」
「まぁ今の俺がこれだけどな」
「なら軽いんじゃないの?」
「わからないか?」
「何がよ」
「両親が行く理由」
「?」
「俺だってもう大学生だぞ? なのに親はおかしいだろ?」
「それもそうね」
「それから帰って考えたんだ」
「考えた?」
「俺は死ぬんじゃないかって」

ハルヒの顔が一気に変化した、心配から恐怖へ

「そ、そんなわけないじゃない」
「俺もそう思った」
「思った?」
「帰ってきた親に言われた事は『出来る限り楽しみなさい』」
「え、そんな・・・ 冗談でしょ?」
「意味わかるか?」
「そんなわけ無いじゃない・・・」
「死ぬかもしれない」

ハルヒの顔が怒りに満ちていた。

「バカじゃないの!? あんた本当にバカよ! こんなんで騙すつもり!?」
「・・・」
「嘘なんでしょ? それかこれが夢なんでしょ!?」
「現実だ」
「ねぇ、嘘だよね・・・? 嘘でしょ・・・? キョン、お願い・・・ 嘘って言って・・・」
「事実・・・だ・・・」
「嘘よ、嘘よ、嘘よ! ありえない、意味わかんないよ・・・」
「ハルヒ・・・ 俺は・・・」
「嫌! 聞きたくない!」
「聞いてくれ」
「聞きたくない、嫌、イヤ!」
「ハルヒ・・・」

完全に顔を手で塞いで俺に背を向けているハルヒ
全て真実なんだ・・・

「なぁ、頼む聞いてくれ・・・」
「イヤよ! ふざけないでよ! 嘘なんでしょ!? バカキョン!」
「俺だって信じたくないんだ」
「バカーッ!」
「オイ、待てよ!」

ハルヒは走り去ってしまった・・・
無論俺が追いつけないほどのスピードで。
残りの時間をどう過ごすか考えてほしかったんだ・・・
これで終わりにするなんて一生後悔するんだ・・・

とりあえず携帯を開いてハルヒに電話してみた。

『この電話は現在電源をおきりにな、、、』
畜生・・・ 切られてるか・・・

追いかけても間に合わないだろうな・・・
ハルヒの家に行っても多分相手にされない。

こんな終わり方はいやなんだ。
















=================================================

自宅。

食欲も睡眠欲も出ない・・・
何もしたくない。  ハルヒと通話できるならなんでもしてやる・・・
家族からもすんごい心配したような目で見られて俺は部屋にこもった。
もしかしたら明日、ハルヒから電話が来るかもしれない・・・
それにハルヒはこの数年間、毎朝モーニングコールをかけてくれた。
もし今命が尽きたらどうする?
自分の欲に答えれず、やり残した事だらけ。
そんな人生の終わり方だけはごめんだ。
だから最後までやりたい事をやって終わりたい。
そのためにはハルヒの手伝いがいるんだよ。
お前が俺を引っ張る、俺はそれについていくだけ。
お願いだ、ハルヒ。   話を聞いてくれ。

























========================================================

翌朝。

目が覚めるまで寝続けていた。
モーニングコールがこなかった。
終わったのかな・・・ これで俺とハルヒの全てが。
悪くないかもな・・・ 下手に未練が残らなくなる。
無理だ・・・ 体が動かない・・・ 起き上がりたくない。









大学を休んだ俺は外に出て昨日のベンチに座り青空を眺めているだけだった。
静かに流れていく雲・・・
いづれか尽きる命。  別にこんなに早くに尽きても変わらないか。
一瞬”自殺”とゆう単語が脳内に浮かび上がった。
だがこれだけは絶対にだめだ。 俺が心に決めていることだ。
温かい春なのに花がまったく咲いていない。 あり得ない話だ。
桜が一枚も残っていない。

昨日は全て満開状態だったのに。










もうやる事が無いので家に帰宅した。
ゲームでもやろう・・・ それしかない。



帰宅したらまず親に
「さっき涼宮さんが来たわよ?」と
「嘘つけ・・・」
「なんで嘘つかないといけないのよ、なんかすっごく心配してたわよ?」
「で、なんだって?」
「あんたが外出中っていったら走ってどっかいっちゃったけど」
「そうか」

とぼとぼと階段を昇っていった。 途中で。

「あんた涼宮さんを泣かせる事だけはしちゃだめよー!」と

俺が泣きたい。




部屋に入ったら携帯の青い光が点滅していた。
どうせ広告メールだろうに・・・

携帯をゆっくり開いてみたら

『着信あり;18件』

おぃおぃ・・・ 18って過去最高記録だぞ・・・?
えっと、誰だ?

『古泉、朝比奈さん、古泉、ハルヒ、ハルヒ、ハルヒ、ハルヒ、ハルヒ、ハルヒ』

って、オイ・・・
ほとんどハルヒじゃねぇか・・・
メールも着てるな・・・
古泉か・・・
『閉鎖空間が大量に発生してます』
すまんな・・・
ハルヒからも結構着てるな・・・
『今何処に居るの?』
『早く電話してきてよ!』
『昨日はごめんなさい』
『お願い・・・ 出て・・・』
などなど・・・

まぁ彼氏としてここまで愛されてるー って思ったら最高だよな・・・
とりあえず電話してやるか・・・

『プルル、ガチャッ』
早いな・・・

「も、、、」
『今何処に居るの!?!?』
「自宅だが・・・」
『ほんとに!? 今すぐ行くから!』
「別に来なくてもいいが?」
『駄目よ、逃げたりしたら許さないからね!』
「わかったわかった」
『ほんとよかったぁ・・・ 早く会いたぃょ・・・』
「そっか」
『このまま繋げててもいい・・・?』
「あぁ、ゆくっくり来い」
『キョン・・・』
「なんだ?」
『ありがとう・・・』
「なんでお礼?」
『ツーッツーッツーッ』
隊長、特攻兵との連絡が途絶えました。

『ピーンポーン』
どうやらまだ生きているようです。

「キョン! 上がるからね!」
と外から大声で。 どうせそうだと思ったがな・・・
現在は家族は外出中。

ダダダダダッダダッダダ!

バアアンンンッッッ!!

だからその扉壊れるって・・・

「キョン!」
ハルヒの顔が安心したように見えた。

「息切れてるぞ、だいじょう、、、ぶかっ!」
ハルヒが飛びついてきた。
俺はベットで寝転がってるからのしかかって来たが正しいか。

「何処行ってたのよ!? 心配したんだからね!?」
「あぁ、すまん・・・ 散歩してた・・・」
「散歩!? なんでわたしを誘わないのよ!?」
「だってお前・・・」
「今までずっと一緒に過ごしてたじゃない! なのに誘わないってどうゆう事!?」
「昨日・・・ お前が・・・」
「心配したんだからね・・・ 本当だったら処刑なんだから・・・」
「すまん・・・」
「ううん、いいの・・・ こうやって会えたんだし・・・」
「ハルヒ、話したいことがある」
「いいよ、もう言わないで・・・ これから先の事考えよ・・・」
「ハルヒ・・・」

俺の服に少し水が付いた後が残っていた。
多分ハルヒのだろうな・・・

「キョン・・・ ぅぁぁん・・・ ぃゃだょぉ・・・!」
「俺もだ・・・」
「ぁぁぁぁぁん・・・ ばかぁぁ・・・! 心配したんだから・・・! ぅっぐぅ・・・」
「心配かけたな・・・」
「昨日はごめんなさい・・・」
「いいって」
「もうずっと離れないから・・・ キョンの傍にいたい・・・」







ハルヒが泣き止むまで数十分かかった。
しかしとても短く感じた。

「キョン、好き、大好きだからね」
「俺もハルヒの事大好きだからな」
「キョン・・・」

そして唇を重ねあった、何度も・・・










終焉は迎えたくない。
もし迎えるのならば全力で突き返そう。
まだ終わらせたくない幸福。
だから最後まで俺はやりたい事がやりたい。


タイムリミットは、すぐそこかもしれない。