Happy cold 12/8(金曜)





もしもの話をしよう。  もしもだからな。
俺に女が出来たとしよう。
そいつとラブラブになっていくうちに団活へ行く回数が減っていくだろう。
そうなれば我らの団長『涼宮ハルヒ』は黙ってはいない。
無理やり突っ込んできて別れさせてくるだろう。

逆にもしハルヒに男が出来たら団活は間違えなく休みの日が増えるだろう。
まぁもしもの話だがな。








「キョン!」

そんな毎日聞き慣れた名詞が俺を呼ぶ
たまには本名を使ってくれないのかい? なぁ。

「早く早く!」

なんでそう急かす。
何処に行くかは知らんが行ったところで俺にはなんの利益も無いのは確実だ。
もしあるならば試食品コーナーぐらいだろう。
だが俺の片手を握ってズイズイとストリートを進行するハルヒ。

「何があるんだよ?」
「いいから来なさい!」

来なさいもなにも俺は強制連行されてる状態だぞ…

「黙ってついてきなさいよ!」

さて、この先何があるかなんて知らんがハルヒは満面の笑みで俺を引っ張っていく。
そんな顔されたら断るに断れん…

「ほら、着いたわよ…」
「ぉぉ…」

着いた場所にあった物はすごい装飾を使ったパレード。
さすがに綺麗すぎて声が出た。
雪でも降ってればもっと最高なのにな…

「どう? 来てよかったでしょ?」

それは昨日の話。
いや今日かな?
俺がベットの上で爆睡してた所いきなり携帯にコールがかかった。
もちろんこんな時間にかけてくるやつなんて一人しかいない。

「なんだよ… こんな遅くに…」
『明日11時に駅前集合ね!遅れたら死刑!いい!?』
「明日…か…」

明日はクリスマス。
さっきまでSOS団でパーティしてたのにまだ何かやるのかよ…

『あんたに拒否権なんて無いわ。』

だろうと思ったよ…

『それじゃぁおやすみ』
「おやすみ…」

ガチャッ

なんでこんな時間にかけてきたのだろうか…
まぁいいや、寝ないと体力が保たない…






「あぁ、よかった…」

俺は目の前の光景に気を取られてしっかりと返事できなかった。

「なぁハルヒ」
「どうしたの?」
「他の三人は?」
「昨日連絡したけど皆欠席って言ってたわよ」
「そうなのか」

俺とハルヒはそのパレードが終わるまでその場に居続けた。

「寒いわ…」

そりゃそうだ… 今は真冬の時期。
しかもハルヒはあまり厚手の服を着ていない。

「ほら、これ着ろよ」

俺が渡したのはジャケット。
まぁハルヒが風邪引くとこちらも色々と困る。

「それじゃぁキョンが寒いじゃない…」

覚悟の上だ。

「じ、じゃあ借りるわよ?」

さぁ、寒いぞ…
真冬の冷気が直接頬に当たる…  マフラー持ってこればよかった…

「ちょっと大丈夫? すごい震えてるわよ?」

ここで大丈夫な人がいたら是非とも連絡して欲しいねっ!
多分人間じゃないだろうに。

「やっぱりこれ返すわよ」
「だめだ、女の子は暖かくしてなさい」

そして男どもは凍えて死ぬ…
うゎ… 俺は死ぬ時は彼女に抱かれて死にたいって思ってんのに
凍死なんて御免だ。

「じゃぁ抱いてあげよっか?」

要するに死ねと言いたいのか?

「そっちの方が温かくない?」
「恥ずかしいわ」
「じゃあこれ貸してあげるわよ」

ハルヒは首に巻かれていたマフラーを解いて俺に渡してきた。

そのマフラーを俺は手に取り再びハルヒの首に巻いた。

「な、なにしてんのよ。 意味ないじゃない」
「だから女の子は温かくしてなさい!」

ハルヒはムスッとした表情でそっぽを向いてる。

「もしあんたが風邪引いたらどうすんのよ、私が責任取らないといけなくなるじゃない
…」
「そん時は看病してくれよ?」
「嫌。 めんどくさそう」

おいおい…

「まぁキョンがどうしてもって頼むなら別に看病して上げてもいいわよ?」
「風邪引いたらな」

やばい… 頭が痛い…
体がだるい…
ふらふらする…

「どうしたのよ? さっきからずっと顔がブルーよ?」
「今日は帰らないか…?」
「ぇ、まだ早いわよ」
「今度の休日になんでも付き合ってやるから今日は帰らないか…?」
「なんか他の女とでも約束あるの?」

他の女とゆう発言は少しおかしいだろう…

「まぁいいわ、じゃぁ土日に色々付き合ってね」
「あぁ…  すまんな…」
「なんで謝るのよ?」
「せっかくのクリスマスなのにこんなに早くに終わらせて…」
「いいのよ別に。 十分に楽しんだし」
「そうだ、プレゼントも上げてなかったな…」
「プレゼント? くれるの?」
「いつもお世話になってるしな」
「私があんたに何時お世話したのよ」
「いつも…かな…?」
「キョン本当に大丈夫? なんかいつもと違う気が…」
「そりゃ寒さのせいだろ」
「そうね」

などと話していたら自宅前に到着。
家には誰も居ないはずだ。
確か俺抜きで出かけているはずだ。

「じゃあな、ハルヒ」
「うん、また今度。 風邪引くんじゃないわよ?」
「わかってる…」

まずい… 体がゆう事を聞かない…
さすがにまだ外にいるから倒れたらハルヒに気付かれる。
とりあえず中に入ろう…


玄関の扉が重い…
あと少し…

ガチャッ

だめだ…体が…ふらふらする…
とりあえず玄関前だが寝っ転がろう…




ピンポーン



うぇぁ? なんでこんな時に客なんだよ…
今留守ですよー


ピンポーン


留守だっつうの。


ピンポーン、ピンポーン



多分ハルヒだな…
いや間違えなく



「キョーン! いるでしょー? ジャケット返すの忘れたんだけどー!」
そんな事かよ、今度返してくれ。
今は頼むから静かにしてくれ… 頭に響く…


「居留守使うの? いい度胸じゃない」

居るけど出れないんだよ…
体がもう動かない…

「入るわよー?」

入るなよ、しかも今この状態を見られたら間違えなくハルヒは心配して看病するなどと言
うだろう…
あまり迷惑はかけたくない…
大丈夫… 鍵はかけてあ…る…?

しまった!  俺としたことが…
手よ!伸びろ! 悪魔の実をくれ! 一定時間有効、いや一瞬でいいから!

ガチャッ

くるな、くるな、くるな!
隠れ身の術ってどうやって使うんだ!?  誰か教えてくれ!

ギギギーー

ステルス迷彩はどこかに落ちてないか!?
頼むから超速達で送ってくれ!


「おっじゃまっしまーすって、キョン、何やってんのよ?」
「よぉ、ハルヒ」
「なんでそんな所で俯せになってのよ」
「ただ遊んでるだけだよ、ジャケットはその辺に置いといてくれ」
「どんな遊びよ… 家族の方々はいないの?」
「あぁ今出かけてる」
「ふーん、じゃあ問題ないわね」
「なにがだグファァッ!」

ハルヒは何もなかったかのように俺を踏んで勝手に家に上がっていった。
「まて! どこに行く気だ!」
「あんたの部屋よ、エロ本でもあるんでしょ?」
「無いから入るな!」
「ふーん、止めたければ止めれば?」

無理だ… 喋ってるだけでも辛いのに…
しかも今どこにハルヒがいるかもわからない…

「あんたね… 辛い時は辛いっていいなさいよ…」
「辛くなんかないぞ、もう帰れ」
「はぁ…」
「なんだよ… 帰れって… グハァァッ!」

ハルヒは次に俺の背中に乗っかってきた。
頼むから降りてくれ。
色々と潰れる…
ハルヒは俺の額に手を当てた。

「やっぱり… あんたすごい熱じゃない…」
「ゴホゴホ…」
「ほら、肩貸して上げるから部屋まで行くわよ」
「すまん… げほげほ…」
「だから言ったじゃない… 無理しないでって」
「ハルヒが風邪引くよりは数倍ましだろ…」
「はぁ? あんたもバカね…」
「なんでたよ?」
「私が風邪引くはずないじゃない」
「やっぱ帰れ、風邪移しちゃ悪い」
「うるさいわね死刑にするわよ?」
「なぜ…」
「いいから黙りなさい」

しかしハルヒのおかげでベットまで着いた。
そのままゴロッとして布団の中に入った。

「今日は家族何時帰ってくるの?」
「多分後二時間は帰ってこないかもな…」
「しょうがないわね家族が帰ってくるまで看病してあげるわよ」
「いいから、帰れ」
「むっ、何よそのいい方。 人が親切してあげてるのに」
「風邪を移しちゃ悪いからだ」
「もう五月蠅いわよ」
「だってお前、っウハァッツァ!」

ハルヒは笑顔で腹にナックルをかましてきた。
怖い…

「痛い… 吐きそう…」
「吐け! もうあんた死刑よ! 許さないから!」
「俺がなにしたんだよ… っ痛!」

ハルヒは俺の発言は耳にいれずに弱い力で叩いてくる。

「あんたがいないと寂しいのよ… バカ…」


沈黙が続いた
こうゆう場合は何を言えばいいんだ…
カッコつけるか?
同感するか?

だが意外な発言だったから俺は開いた口が塞がらない…

「あんた… こうゆう場合は男から話を切り出すもんでしょ…?」

今内容を考えてたところだ。

「ハルヒ… 寂しいって言葉の意味は知ってるか?」
「バカにしてんの?」
「確認だ」
「寂しいは寂しいよ… あんたが三日間眠り続けた時どんだけ寂しかったと思ってんのよ
…」

あぁ… あん時か…
あん時はハルヒがいなくなったんだよな…
ほんと必死だったよ…

「なによその顔…」
「元からだ」
「カッコイイ顔じゃない…」

















「は?」
「は? ってなによ」
「熱が移ったか? 大丈夫か?」
「そうかもね、キレるわよ?」
「すまん…」
「まぁいいわ、じゃあ帰るわ」
「帰るのか!? 看病してくれないのか!?」
「あんたが帰れって言ったんでしょ?」
「ぅっ…」
「どうすんの?」
「看病してください… 涼宮さん…」

むぅ…  男にこんな事を言わせるなんてこいつ将来大物になるぞ…

「ならしょうがないわね、家族が帰って来るまでよ?」
「出来れば家族が帰って来るちょい前に帰ってくれ」
「なんでよ? 挨拶もしたいしいいじゃない」
「誤解されそうだからだ」
「誤解? そんな関係になった覚えはないけど?」
「なってくれ」

口が勝手に動いた
嘘だ… 今のは嘘だ… いや嘘じゃないかもしんないけど…
聞こえて無いだろ? ハルヒ…

しかしハルヒは顔を真っ赤にしてこちらを凝視してくる…

「嘘… 嘘だハルヒ。 真剣になるなよ?」
「なんて言ったの…? 今…」
「真剣になるなよ?」
「違うわよ…  その前」
「な、なんでもない…」
「10、9、8…」

なんのカウントダウンなんだよ…
なんて言えばいい…?
ハルヒ…好きだ…
いやこれは微妙
ハルヒ… 帰れ…
これは殺されるな…

「4、3、2…」
「お前が好きだ、俺の側に永遠にいてくれ」
「お前って誰?」

ニヤけるハルヒ
お前はお前だ

「俺は涼宮ハル ゴホゴホ…」
「告白なんていつでもいいわよ、私の気が変わったら別だけど」
「ハルヒ… 」
「でも、あんた もし私と付き合うなら相当の覚悟がいるわよ?」
「なんの覚悟だ…」
「もちろん浮気は死刑。 私を退屈にしたら死刑。 私を幸せにしなかったら死刑」
「わかってる げほげほ…」
「ちょとタオル持って来るから待ってなさい」

ハルヒはなぜか急いで部屋から出ていった。

あーあ… ついに告っちゃったよ…
朝比奈さん、長門、さようなら。
俺の選択肢はもう消えました…
大体ハルヒはやる事が反則だ…

それにしても腹減ったな…
夜飯食ってないんだよな…





「おっまたせー!」

数十分してやっとハルヒが帰ってきた。

「遅かったな」
「キョンお腹すいてるでしょ?」
「あぁ」
「台所借りたわ、おかゆ作ってあげたから感謝しなさい」
「ありがとな」
「とりあえずこれとこれ」

ハルヒは俺の枕を取ってアイスマクラに代えて、俺の額に熱サマシートを貼付けた。

「ほら、あーんして」




恥ずっ!




「うっさいわね、鼻の穴から食べさせるわよ?」

俺の鼻にそのようなスキルは付いていない。

「ほら」
「ぅあーん」

『ぅ』はなぜか口から出た言葉だからな

「パクッ…  熱っっっ!!!!」
「ぇぇ!? ごめん、冷ますの忘れてたわ」

わざとか…?

「フー、フー、フー、ほら、あ〜ん」











ハルヒの作ったおかゆはとても旨かった。
ペロッと全て食べてしまった。

「結構な量作ったのに… 食欲だけはあるのね…」

「まぁ旨かったしな」
「そう、よかった」

ハルヒは俺の方を眺めながら

「もう一度よく考えなさいよ?」
「なにをだ?」
「私と本当に付き合うかどうか」
「なんでだ?」
「私を選んだらみくるちゃんや有希や古泉君も選べなくなるんだからね?」
「あぁわかってる」

なぜ古泉が入ってたのかとゆいツッコミは封印した。

「私ね… キョンの事はずっと前から気になってたんだ…」
「ずっと前?」
「ずっと前から…」
「何時だ?」
「もう寝なさい」
「教えてくれよ」
「寝なさいってば」
「教えてくれたらな」
「寝て…」
「ぅっ…」

あまりにも可愛い顔をするハルヒに抵抗出来なくなった俺。
仕方が無いので寝る事にしよう。
だがハルヒの今日の行動は全てが予想外だった…
今もそうだ
ハルヒは俺の頭をゆっくり撫でている…

「お疲れ様… キョン… ゆっくり休んでね…」



そうさせてもらうよ…

暖かいハルヒの手を感じでいたかったが俺は睡魔に負けて寝てしまった…


クリスマスが… こんな終わり方か…
ハルヒ、ごめんな。 こんな終わり方で。