「痛っ…」

ぐるんっ、と回るような感覚が襲ってきた…
驚き目を開けてみるとそこには見慣れた自分の部屋が広がっていた。
前と似たような感じになってるな…

まぁ… なんだ… 世界が元に戻ったのか。
それとも新しい世界なのか。

「はぁー…」

寒いし寝よう… 風邪ひいちまう…

「えっくしょっんっ!!」

あぁ… もうダメかな…
噂されているか風邪引いたか…
って、そんな事よりまだ四時じゃないか…

眠いって… 二度寝開始だ。






*







「キョンくーん。 朝だよー」


我が家の目覚まし時計が俺の部屋に訪れた。
俺にはこの目覚ましがあるから携帯のアラームもいらないさ。

「重い…」

いつも通り俺の上に乗る妹。

「朝だよー」

我が妹よ、お前にもわかる時がくるさ。
この眠くて辛い朝が。

「わかったから先に下の階に行ってなさい」

「はーい」


素直なその気持ちを忘れずに生きるんだぞ。
俺のような人間にならないようにな。
などと密かに願う俺。

新しい世界ならば俺は存在していないかもしれない。
それより記憶が無いはずだ。

世界が戻ったのか?
それなら嬉しいんだけどな…











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登校中に思い出していた。
夢んなかで確か人の目を気にせずに抱き付く…んだけっけ… 俺…

でも男に二言は無いって言うし…
いや、俺の辞書にそんな言葉は無い。

ハルヒを部室にでも呼び出そうか…














「よぅハルヒ、元気か?」

教室に入ったらやはりハルヒは自分の席に座っていた。
いつも通りに窓の外を眺めている。


しかし俺が声をかけると振り向き立ち上がった。

そしてどんどんと近付いてくる…

「どうした? あぁっ!?」


思わず大声が出てしまった。
そりゃそうだよな。
いきなりハルヒに抱き付かれたんだ普通そうなる。

「うっ… えっぐぅ…あぁん… きょぉん…」

「は、ハルヒ!?」


ハルヒが…ハルヒが!いきなり泣き始めた…。
俺が何かしたか!?

しかも結構な力で抱き締められているから脱出も出来ない…
俺の胸の中にハルヒは顔を埋めているので表情はわからない…
でも声からして泣いていると思う…

「おい… あれ…」
「やっぱりねー・・・」

ざわざわと教室の中がしてる…。
えぇい… 見るな馬鹿野郎共…

「よかったぁ… よかったよぉ… きょぉん…」
なんだ… そのー…
こういう時って… 頭でも撫でてやるよな…?

あぁ… もういい… 他人の目なんてもう知らない!!


「世話焼けるな、まったく」

ハルヒの背中に両手をまわして同じことをやってやった。

「ぅぅぁぁ… きょぉん… ぅぁぁぁん…」

泣きたいだけ泣け。
終わるまで俺が傍に居てやるよ。
もしもハルヒがこの事で何か言われてたら俺はそいつをぶん殴ってやる。

だがやはり場所が悪過ぎる…

「とりあえずついてこいよ」

ハルヒの手を引っ張り教室を出ていく。
そういえば始めてだ。
いつもなら逆の立場なのに、今回は俺がリードしている。














バタン。


部室に入りとりあえずパイプ椅子をハルヒに渡す。
ハルヒらしくないちょこんっとした座り方…

俺も近くのパイプ椅子に座った。
とりあえずハルヒに聞くしかない…
色々な事を…

「色々ききたい事がある」

「何?」

「お前は昨日、どんな夢をみていた?」

正確には昨日か今日かわからないが、そんな事を気にしたら話が進まない…

「世界が崩壊する…夢…」

「そうか…」

同じ夢ならば、あれは現実と言ってもいいのかもしれない。
この世界が新しい世界…

「私が願った途端に世界が消え始めたのよ? おかしいと思わない?」

先ほどの弱い姿を見せていたハルヒとは代わり、いつもの状態になってしまった…
まぁあっちの方は気が狂いそうになるから… 勘弁だな…

「もう生きるのもつらくなったの… だから一掃のこと世界事って思ったら…」

私事で世界を壊す… そんな理不尽な…

「死ぬなんて言ったら許さないからな」

「わかってるわよ…」

「死にたいと思った理由は?」

これが気になる…
裁縫針に糸が入らない…、 とか言ったならば俺が世界を破壊してやろう。

「キョンが…」

理由が俺ときたか。

「あっ… ううん。 なんでもないわ」

中途半端で気になるな…
別に俺がハルヒに対して何かしたわけでもないしな…

「でも最後にキョンが私の前に現れたのよ?」

あん時は必死だったからな…
さすがにあそこまで走ったならば相当疲れるだろうし…

「しかもいきなり抱き付いてくるのよ?」

「お前だってさっきそうしてたじゃないか…」

「うっ、うるさいわよ!」

少しだけハルヒの頬が赤くなった。
まぁハルヒにもそんな気持ちがあるという事だ。

「でも… 嬉しかったの… 最後は私のところに来てくれたことが…」

「そうか。 俺も最後にハルヒに会えてよかった」

するとハルヒが不思議そうな顔をした。

「あんたも同じ夢みてたの…?」

「まぁな」






「えっ、何よそれ… じ、じゃぁ… 最後に言ったことも全部…?」

「だな」











「こんのぉバカキョン!!!」

飛び掛かってきたハルヒを受け止めた。
一瞬だけ見えたがハルヒは物凄く幸せな顔をしていた。

なんだよ、怒ってないならバカとか言わないでほしいものだ…

「あんたはバカよ! 私がどれだけあんたを想って・・・」

「何をだ?」

「う、うるさいわよ!!」

ぎゅぅっとハルヒの腕に締め付けられる体・・・
こいつ・・・ 本当に女の子か・・・? すごく力入ってるんだが・・・

「本当によかったわ・・・ あんたが消えた時はどうしようかと・・・」

「世界を壊したくなかったのか?」

もちろん夢の中の話だ。
現実の世界を壊してもらったら大変な事になる・・・

「キョンが・・・ 少しでも私を頼りにしてるなら・・・ いいかな?って思っから」

頼りにした覚えが無いのだが別にいいだろう。

「でもキョンと別れるのが辛いから世界を壊したく無いなんて思ったんじゃないんだからね!」

へいへい、分かりましたよ。 よーく理由が理解出来ました。

「俺は、ハルヒと別れると思ったら辛いな」

「へ?」

不意をつかれたような表情をしているハルヒ・・・

「わ、私だってそうよ・・・」

さっきと言ってることが違うじゃないか・・・

「一々うるさいわね! 私のこんな格好見せたんだから責任取りなさいよ!!」

こんな格好とは、この抱きついてる状態のことか?
それを見たから責任? 意味不明かつ不条理。
抱きつかれて相手を見ない人間などいない。 多分機械人形でも見ると思う。

まぁいいさ。 俺はハルヒが大好きだ。 だから夢の中でも必死にハルヒを探した。
今までも色々雑用を受けてきたが従った俺。
少しでもハルヒの傍に居たかったからな。


「わかった!?」

「まったく・・・しょうがないやつだな・・・」

まるで太陽を顕微鏡で見るような輝きがハルヒの顔に宿った。
ハルヒだけ抱きつくのは不公平なので俺もハルヒの背に腕を回して力一杯抱きしめてやった。

「こういう状況で何するか知ってる?」

「知らん」

「大体告白すらしてないのに異性が抱き付くなんて考えられないわよ」

どっちが先にやったと思ってるんだよ・・・

「ぁー、じゃぁ好きだハルヒ」

「なんか適当ね・・・」

シンプル イズ ザ ベストだ。

「まぁいいわよ・・・ 私も好き」

カップル成立。
いつまでも壊れることの無い、鋼のような愛だ。


「ねぇ。 キスしてもいい・・・?」

ハルヒの願いなら俺が全てかなえてやる。

「ならいいわね。 じゃぁ一回愛してるって言って」

「ハルヒ、愛してる」

別に言わんでもキスぐらいは出来るだろうに。
まぁハルヒの思考回路がよめる奴なんてこの世界には存在しない。



こうして、念願のセカンドキスが終わったわけなのだが。

「一限目ぐらいサボってもいいわよね」

などと言い出すから理由を聞いてみると。

「そ、そんなの自分の頭で考えなさいよ・・・ 男でしょ?」

だとさ。




「もし浮気したら許さないからね・・・」

俺はそんなに気の多いい男ではない。
第一に高校生で二股とか想像できん。

俺にはハルヒ一人で十分だ。

それに応えれる器になるよ。