人間ってのは自分勝手だ。
自分の気に食わない事をされたら怒る。
別に普通だと思えるが、怒る事が許されない人間だって世の中にはいるんだ。
有り得ないよな…

『キョン、私今日お金忘れたからあんたの弁当よこしなさい』
だもんなぁ…

一応財布には漱石が4人ぐらい居たからよかったけど…
いや、待て。
別にハルヒに金を貸してやればよかったじゃないか。
しかしハルヒがそこまで頭が回らないなんて思えない。

しかもあの弁当を食わすのが恥ずかしい…
実は今日は親が作り忘れて、緊急で俺が作りあげたものだ。
六割が冷凍食品だがな。

にしても久々の学食だ。
本当に久しぶりだ。
前回来た時は何食ったっけな…

結構空いている食券機の前に立ち漱石を一人派遣した。

どうすっかねー。
ハルヒが言うには確か一番美味いのはカレーだったか?
しょうがない一度食べてみよう。










カレーというのは家庭それぞれ味がまったく違う。
素材から調理方法まで全て。


まぁ俺の持つトレーの上のカレーは普通な気がする。
匂いはなかなか。 問題は具が少ししか見当たらないこと。
この学校… ケチくさいな…








んな事より…
席開いてない…

こりゃ大変だな。
座る場所なければ食事も不可能。
立ち食いなんて出来ないし…





「もしかして… あなたがキョン君?」





急に後ろから女性の声が。
俺を呼ぶ女性なんて限られている。
朝比奈さんぐらいだろうな…






って俺の予想も大外れ。

後ろに座っている女性は明らかに朝比奈さんでは無かった。
黒い髪をした校内でも有名な女性だった。
スタイルはよくて性格も最高。
更に文武両道という無敵な存在。

「そうですが?」

「座る場所ないなら座っていいよ。 色々話したい事あるのよ」

まず俺と話す事はなんだ?
SOS団についてか? 一番ありそうだが…

って、その前に俺がこんな女性グループに参加していいのか…?
良く見たらなかなかの女性が5人…
そして空き席が1つ…

「照れなくてもいいから。さっ、早く」

照れというかその後の男子からの仕打ちが恐ろしいのですがね…
まぁいっか…
本当にピンチなら長門に頼もうかな。
すまん… いつも迷惑かける…


「それじゃぁ、失礼します」

「はーい」

テンション高いな…
ついて行けそうにないや。

「早速だけどキョン君。 軽く自己紹介して♪」

「はいぃっ!?」

自己紹介ですと!?
やる意味あるのかわからん…
けど雰囲気的に断ったら燃え尽きるまでいぢられそうだし…

「えっと… 」




自分に合わない量の自己紹介をしてしまった。
まったく… 緊張してるよ…
当たり前だよな、こんな女性軍団に囲まれたら男なら誰でもこうなる。

「なるほどねー。 朝比奈さんが惚れるわけだ」

「ん? 何か言いました?」

「別に♪」

カレーを食べるのに必死になっていたため聞き取れなかった。
なんか重要な物を見逃してしまった気が…

「ダメだよそれ言っちゃー」

一体何を言ったんだろう… 気になるな…

「ねね、キョン君。 メルアド教えてくれない?」

「はいっっ?」

声が裏返ってしまった。
まだ話始めてから数分ぐらいしか経過していない女性にメルアドを聞かれたんだ。
こりゃ驚くだろ…
別に断る理由も無いのでいいだろう。












==============


「またお話しようねー」
別れ様に可愛く手を振ってくれた。
幸せな一時だったな。



「ん?」


背中に感じだ禍々しいオーラ。
直でくらったら即死になりそうなぐらいの力をもっている…

いや、気のせいだろう。
多分最近ハルヒに振り回されて疲れてるんだきっと。
あいつも少しは素直になって女の子っぽくなったら絶対にモテるのに…
もったいない…





















教室に戻り、一番最初に目についたのはハルヒ。
いつものように窓から外を眺めている。
本当は宇宙人と交信でもしてんじゃないのか?

そして俺の机の上にポツンと残された弁当箱。

「ハルヒ、弁当どうだった?」

いつもなら無関心そうに窓を眺め続けて俺と会話するハルヒだが今回はこちらをむいて、

「あんたのお母さん料理上手いわね」

おー、それは嬉しいお言葉ですねハルヒさん。

「なんであんたが喜ぶのよ?」

「いや、だってさ。 今日の俺の弁当を作ったのは俺だからさ」

「え…」

不意を突かれたかのようなハルヒのマヌケ面。
俺にも一つ自信がついた。

「も、もっと早く言いなさいよね!!!」

別に早く言おうが遅く言おうが変わらんだろう。
それとも俺の料理は食べたくなかったか?

「違うわよ!! 始めからわかってたら味わって食べたのに…(ボソッ」

「何か言ったか?」

「何も言ってないわよバカキョン…」

へいへい。
気を悪くしたようならば許してくだされ。

「♪♪〜〜♪〜〜〜」

突然鳴る携帯。
「すまん、ちょい出るわ」

コクリと頷くハルヒに背を向けて電話に出た。

『あっ、キョン君?』

「あぁ、どうも」

電話の相手は先ほど、学食で会った時の中で一番いいと思った女性。
何がいいかって? それは男の魂に聞いてくれ。

『今度一緒にどこか行かない?』

「俺と… ですか!?」

『そうだよ』

あまりにも普通に言うので驚いた。
待て。 俺!?
俺と一緒に出かけて得は無い。 いや、雑用として扱われる可能性も・・・

「それって… デートって事ですか…?」

『だねー。 もしかしてキョン君は彼女とかいるかな?』

「別にいませんが・・・」

デート・・・?
デートと言えば恋人同士のお出掛け。
しかし俺とこの女性はランチ中に少し会話しただけだよな・・・
それがここまで発展するのか?

『そういえば涼宮さんって方とはどういう関係?』

「ハルヒですか?」

ハルヒが出てくる理由がわからない。
関係? そうだな、主人と雑用みたいな感じかな。
対等にはなれないと思います。

「なんか言った?」

もちろん俺は自分の席で電話しているため後ろの席には俺の声が届いている。
色々と聞かれたらまずそうだな。
とりあえず首を横に振っておこう。

「別に普通の友達ですよ」

『本当に? いつもあんなに一緒にいるのに?』

確かによく一緒にいる。
だからといって変な関係では無い。

「普通の友達です」

『なら心配いらないね♪ じゃぁ明日の午前11時ぐらいに駅前でいいかな?』

「どうぞ」

『じゃぁ楽しみにしてるねー』

プチッ ツー ツー ツー

よく考えるといつの間にかお出掛けする事になってしまった・・・
断ればよかったのになぁ・・・ 俺・・・
こうなる事がわかってんのに・・・

「今の誰?」

まるでオーディンと会話しようとしている気分だ。
振り向いたら睨みつけで殺されそうな禍々しいオーラ。

「さっきランチルームで知り合った男友達だ」

「男友達? 友達じゃなくて? 男? それとなんで私の名前が出たの?」

追求しないで欲しいところだ・・・
普通に友達って言えばよかったな・・・

「男だ。  名前が出たのはお前が有名すぎるからな」

「携帯出しなさい」

俺の目の前に突き出されたハルヒの手。
なかなか綺麗な指してるじゃないか。 じゃなくて

本日俺の携帯には女性の名前が5つ新しく入力された。
それを見られる可能性も高く、ていうかこれは夫の浮気の証拠みたいな感じになっているのだが。
断言しておこう。 俺とハルヒは付き合ってもいない。

そんな事よりどうすれば今の状況を逃れれるか・・・

「安心しなさい、メールは見ないわ。 電卓使うだけ」

電卓なら自分の携帯でいいだろうが・・・
嘘が下手な奴だな・・・

しかも俺はお前に携帯を渡す気が一ミクロンも無い。

「よこしなさい」

既に口調が貸せ系からよこせ系になっている。
更にどんどん曇るハルヒの表情。
俺何かしましたか?

「いいから早く出しなさい」

逃げる方法・・・


「等価交換って知ってるか?」

「はぁ?」

これしか無いのか!?

「俺の携帯を渡す代わりに同等の価値をした物を俺に渡さなきゃならないんだぜ?」

ハルヒの携帯を出されても意味が無い。
どうせ男のメールなどありはしないだろうし。

「団長命令よ。 今すぐ出しなさい」

スルーですか。
まったく俺の意見を聞く気無しですか。

そして俺のポケットの中で動く手。
最終防衛ラインの製作中。


「まったくしょうがないな。 その代わり後で何かおごれよ」

ハルヒの片手に俺の黒き携帯を乗せる。
俺の最終防衛ラインはそうそう壊す事は出来ないだろうしな。
パスワードだ。


なんか輝いたハルヒの表情。
パスワード入力画面をみた瞬間暗くなるだろうな。
なんだこの罪悪感・・・。





「ふーん、二年の女性ね」

「なっ」

今頭から『Σ』が出たねきっと。
こうも簡単に俺の最終防衛ラインが陥没するとは思ってもいなかった・・・
だって八行だぜ? それがこうも簡単にハルヒによって・・・
いや、ハルヒだから出来るのか・・・

「着信履歴を見る限り・・・ この人ね」

どんどんハルヒによって調べられていくマイプライベート。

「別に恋愛したら駄目なんて言った覚えは無いわよ。 ただそれによって団を揺るがすなら許さないけど」

ううむ・・・ 今日のハルヒはなんだか怖い・・・
なんか顔がニヤけてる・・・・

「さっきの電話はデートの約束?」

「ま、まぁな・・・」

「いつ? どこで?」

なんでそこまで詳しく教えなければならないのだ・・・

「それによって団の活動する日が変わるからしっておきたいじゃない!」

それならしょうがない・・・






*



「ふーん、明日11時に駅前でキョンは×っと」

何に×をつけたんだ? まぁいいけど。

「いい? もしも団を揺るがすなら二人を引き剥がすからね」

「へいへい」

まだ付き合ってもいない人とただ出かけるだけだ。
それで団が揺るぐはずがない。
















































===========================================================




「すいません、お待たせしました」

本日、雪山の雪が全て溶ける程の晴天なり。

「別に気にしてないからいいよー」

俺は久々のデートをする。
相手は中の上の上ぐらいの方。

どしょっぱつから手を繋ぎ、ストリートを歩いていく。


「とりあえずご飯行こっか」

「そうですね」




近くのファーストフード店に入って注文する。

「今日は私が出すからキョン君はいいよ」

こんな一言でも俺はジーンときてしまった。
いつもの市内探索では、ほとんど俺が支払い役。
そろそろ財布の中もピンチになってきているのに俺。

けどこの方は・・・
自分から支払ってくれると申してくれた。
嬉しいのだが。 それは男として・・・

「俺が出しますよ」

「いいよ別に。 今日は私から誘ったんだし」

「じゃぁお言葉に甘えます・・・」

なんていい人なんだ・・・
ハルヒがこんな性格だったらどれだけモテルことやら・・・






*





それから近くのゲームセンターに行ったり、映画を観たり、買い物をした。
実にデートらしいデートだった。

「ちょっとトイレ行ってくるね」

「あ、はい」

買い物中だった。
そんな時突然。

「♪〜〜♪〜♪♪〜〜〜」

ポケットに入った携帯が鳴り始めた。
この音はメールか。

送り主はー・・・・

古泉か。


『閉鎖空間が大量に発生してます。機関でも対応してますが量が多すぎて間に合いません』

俺は現在ハルヒの近くにはいないのに・・・ 俺にどうしろと・・・?

「♪〜♪♪〜〜〜〜♪」

メールに続き電話かよ。

次は誰だ? 長門か?

『着信:涼宮 ハルヒ』

閉鎖空間発生源からのお電話のようだ。

「なんだ?」

『あー・・・ あのさ・・・ 今から・・・』

「ん?」

『ううん、やっぱりなんでもないわ! それよりデートの調子はどう?』

人のデートを心配しなくていいから古泉を少しでも助けてやれ。
多分今頃必死に世界のために働いているだろうからな。

「まあまあかな」

『・・・』

「どうした?」

テンションが上がったり下がったりいそがしい奴だな・・・

『ううん・・・ なんでもない・・・』

しかしどんどんとトーンが下がってますよ?

「なんだよ気味悪いな」

『別に・・・』

「本当に大丈夫か?」

いつものハルヒからは考えられない程のトーンの低さ。

『それよりもデート・・・を・・・頑張りなさいよ・・・?』

「まぁ出来る限りな」

『じゃあね。 また』

「あぁ」

ピッ




「♪〜〜♪〜♪♪〜〜〜」

いそがしい携帯だな・・・
なんでこうもタイミングよく何度も鳴る・・・
しかも再び古泉。

『閉鎖空間の増加スピードが上がりました。 何か涼宮さんにしましたか?」

増える理由はなんだ・・・
ただ電話しただけなのに増加スピード上がるのか・・・
て事はハルヒは何かが原因で不機嫌or不安or何かなのか?
すまんが今の俺にはどうにも出来ん。

「お待たせ」

















*










買い物も終わり、そろそろ時間も時間なので帰ることにした。
帰り道もお互いの手を握っているが、やはり男というめんなのかもう一つの手には荷物。
頼むから雑用じゃなくて男として持たせてくださいね。

「今日は楽しかったよ。 また今度一緒にいい?」

そして再び誘いを受ける。
別にこれぐらいならいいだろう。

「俺でよければよろしくお願いします」

彼女の笑う顔が好きになってしまったかもしれない。
まったく・・・  男ってのは自分勝手だな。





帰り道に見つけた公園のベンチに座り休憩をとることにした。
周りも暗くなり星が見えた。

「綺麗な星空・・・」

横に座る彼女は空を見上げていた。
俺もつられて空を見上げるがどうも首が痛くて長時間出来ない・・・

「キョン君。 最後のお願い聞いてくれますか・・・?」

「はい?」

大したことでなければ叶えるつもりはあるけど・・・

「キス・・・してもいいですか・・・?」

本日二度目の『Σ』が出た気がする・・・
ちょっと待ってくださいよー・・・ 
今日はデートしただけ。 別に恋人同士でも無いのにデートしたんだが気にしないでおいてくれ。
キスってのは恋人同士がするもので・・・
友達同士がするものでは無く・・・

なんて考えてるうちに彼女の顔は近くにあった。
ゆっくりと顔が近づいてくる。
これが、俺の二回目のキス・・・
夢の中だが。 最初の相手はハルヒ。
恋人でも無いし、友達とも見られて無い気がする。
ならいいのか? このキスも。


こんな展開も何かの運命かもしれない。
たった一瞬だ。 これも俺の人生の中の天命なんだろう。
















「♪〜〜♪〜♪♪〜〜〜」

「!」

いきなりの着信音に驚いて後わずかの距離で触れるところだった唇の距離が一気に遠ざかった。
いいムードだったんだがな・・・

『涼宮さんに何したのかわかりませんが閉鎖空間が現実と代わり始めています。もしかしたら世界が終わるかもしれません』

ハルヒ・・・?
なんで今日に限ってハルヒが不機嫌なんだ?

「キョン君・・・?」

「♪♪〜〜♪〜〜〜」

更に鳴る携帯。 本当に忙しいな。

「すいません、ちょっと失礼します」

「うん・・・」






公園の端まで走り通話ボタンを押す。

「どうした長門」

電話の相手は長門。

『今すぐに涼宮ハルヒと合ってほしい』

「どういう事だ?」

『詳しく話すと長くなる。 世界が崩壊し始めている』

「はぁ・・・」

いっそうのこと、人の機嫌で崩壊する世界なんて消え去ればいいと思った一瞬だったが。
まだ俺には時間があるのだから出来る限り楽しみたいよな。

家族、SOS団、そしてハルヒと。

何を今まで自分に嘘をついていたのかわからない。

夢の中でもキスをしたならばカウントされる。
友情の証なんてものじゃない。  好きだからだ。

それ以外にキスをする理由が無い。
なら聞いてやる。 学校で隣りの席にいる女性にいきなりキスできるか?

出来るわけがない。

どんなに親しくとも出来るはずがない。

出来るのは恋愛対象のみ。


ハルヒは夢の後に俺を攻めなかった。
あいつの性格だ。 少しぐらいは何か言ってくるだろう。
そして通学してみるとそこにはポニーテールのハルヒが居た。
それが俺のキスに対してのハルヒなりの答えな気もした。

正直嬉しかったのかもしれない。

その答えが。





『後3分』

電話の先で呟いた言葉は時間制限。
それってかなり難しくないか?
この大きな空間の中で3分以内にハルヒを見つけ出すんだぜ?
難易度高いなぁ・・・

『大丈夫、あなたを信じてる』

俺を信じられたところで見つけれるか危うい。

『じゃぁ。 再びあなたに会える事を期待している』

ツー ツー ツー

切れた。
残り3分。

そして世界崩壊の音が聞こえる。
灰色の空間で聞いたことのある、とても嫌な声。





「ごめん、本当にごめん」

「どうしたの?」

とりあえずベンチまで到着。 今までに無い全力疾走で。

「用事が出来ちゃって・・・ それで帰らないといけないといけません」

「そっか・・・」

暗い顔をする彼女。

「また今度一緒に遊びに行きましょう」

「そう・・・ だよね・・・ まだ時間はたっぷりあるもんね」

そこである事に気付く。

「荷物・・・」

「いいよ、これくらい私が持っていくから」

「すいません。お願いします」

頷く彼女を後に公園を出た。
ものすごく申し訳ない事をしてしまったな・・・
今度遊びに行きましょう。 友達として。




































残り2分13秒。

ヒントも無い・・・ こんなに難しいゲームはやったことない。
何箇所か心当たりはあるが、全て回りきる前に世界が崩壊するであろう。

とりあえず部室しか思いつかない。
そういえば今日は部室で活動するとか言ってたしな。
















































残り1分25秒。


意外と速く走れる自分に驚きだ。
土足のまま校内に入り部室棟を目指す。
部室棟の窓が何箇所か光っている。
結構時間遅いのに活動してる部活あるんだな。











































残り0分58秒。

携帯に表示されているカウントダウンタイマーがどんどん進んでいく。
実を言うとこのタイマーは俺が設定したものではなくて、長門と電話が切れた瞬間に表示されたもの。
さすがヒューマノイドインターフェイス。

なんて言ってる場合ではなくて。

「ハルヒィィッッ!!!」

初めて全力で開けるSOS団の部室の扉。
なかなかの爽快感が味わえるな。 そうかハルヒはこれを毎日・・・ じゃなくて。

「いない・・・」

部室の電気は点いているが誰もいない。

そして窓から見えるのは久々の光景。
青き超人が立っている。
ここは現実なはずだ。 古泉、どうなってる・・・



でも部室が光っているならば先ほどまで誰か居たんだろう。
ハルヒは一応しっかり者だから消さないで出て行く事はありえないだろうし。

外の神人。
ハルヒは二度目だろうな。 これを見るの。



前回はどこで終了した?
ハルヒとキスをした場所。



グラウンド?




待て待て待て待て。 それならもう間に合わない。
なんか脚力上がる魔法とか無いのか?










































0分43秒。

既に部室にいないと確信した時には再び走り始めていた。
ロスタイムは無し。
全力疾走でならまだ可能性はある。















































残り0分25秒。

やっとの事で校庭にでることが出来た。
まだ距離があるな・・・

明日があるならばきっと筋肉痛かもしれん。











































残り0分9秒。

見えた。

ハルヒのらしき人物が。



いや、あれは100%ハルヒだ。

カチューシャが目立つ・・・
その前に大変だ・・・ 世界が消え始めてる。
迫ってくるなんか。 学校が完全に消えうせて黒い。

ガラスが砕けるようにハルヒを軸として周りが消え始めてる。
素晴らしく綺麗な光景なんだが見とれてる暇があるならば一歩でも先に進みたい。

















































残り0分4秒。


「ハルヒィィッッ!!」

まだ30mぐらいあるがこの距離なら聞こえるだろう。

そして振り向く彼女。

「キョン・・・?」

微かな声が俺の耳には届いた。

三分間の全力疾走はキツイ。
足の行動速度が落ちてる・・・







パシィィィッッ。




ガラスにひびが入るような音が耳に入った。
それと同時に体が金縛りになったかのように動かなくなった。
なんだこの感じ・・・  朝倉の時と似てる・・・





































































残り0分0秒。













































結末的に言えば間に合わなかったが正しい。
しかし世界の崩壊はハルヒの周り半径10mあたりで停止した。

なんだよ、ずるいなぁ・・・

体が動かないって事はあの何かに飲み込まれたんだよな?

ここで終わり? 俺の人生が?

まぁ・・・ 思い起こせばハルヒと楽しい時間が過ごせたんだよな・・・。
よかった。 満足なのかもしれない。




ピシピシピシッッ・・・・・・・・



ガラスが割れる音ってのは幻想的だ。
もう最終段階な感じのひび割れ音だ。





ありがとな。























































痛いって・・・

「うわっっっ」

「あんた何やってんのよ!!!」





俺の見てた限りでは、突然ハルヒがこちらに向かってきて腕を捕まれて引っ張られた。
ハルヒに助けられたのか?
再び聞けてよかった、この声が。

そしてなりふりかまわずハルヒを抱きしめた。


「ちょ、ちょっと! 何のつもりよ!!」

何のつもりでもない。
世界が終わるまでのこの時間を大切にしたいんだ。
タイムリミットは過ぎた。

「あんた・・・ 肩震えてるわよ・・・?」

知ってるさ。
見られたくないからこうしてるんだ。

「はぁ・・・」

ハルヒの溜息聞くのもこれが最後なんだろうな。

「まぁ団長として団員を慰めるのも仕事だしね、好きなだけこうしてなさい」

少しずつ、本当に少しずつだが先ほどの世界がカガミみたいに割れるのが迫ってきている。
ゆっくりとピシッと音を経ててパリンッ・・・と割れていく。

「なんとか言いなさいよバカキョン・・・」

「どうしてここに居るんだよ・・・ 部室ならまだ間に合ったのに・・・」

「ここにこれば・・・ なんとなくだけど・・・ またあんたに合える気がしたから・・・」

「世話かけるなよまったく・・・」

「はぁ? それはこっちの台詞よ!」

「はいはい」

「なんかだかムカツクわね・・・。 まぁ・・・でも、これが夢なのか現実なのかさっぱりわからないのよ」

「俺もだ」

「夢ならまた会えるよね・・・」

「当たり前だ」

「現実でも・・・ これが最後でも・・・ 私は最後にキョンに会えてよかったわ・・・」



本当にありがとうな。
よかったよ、これまでの人生。

ハルヒに出会った瞬間俺の人生全てが変わった。

出来るならば時を戻したい。

本当はまだ終わりたくない。 ハルヒとの人生。

こんなところで・・・


























パリィンッ・・・